「プライベートバンクのサービス内容や特徴は?」「なぜ誰でも利用できないの?」と疑問を持つ方も多いでしょう。
プライベートバンクは、富裕層向けに資産運用や資産管理などの金融サービスを提供する機関です。顧客は、資産状況や目標に応じた専門的なアドバイスや運用プランを受けられます。
この記事では、プライベートバンクの特徴、サービス内容、メリット・デメリットを解説し、国内外のプライベートバンクの違いも紹介しています。ぜひ、参考にしてください。
プライベートバンクとは?
プライベートバンク(プライベートバンキング)の特徴や利用条件を理解し、一般的な銀行との違いを把握することで、自分に適したサービスかどうかを判断しやすくなります。ここでは、プライベートバンクの特徴や提供されるサービス、利用条件、そして一般的な銀行との違いについて詳しく見ていきましょう。
富裕層を対象とした資産運用・資産管理のサービスを提供する銀行のこと
プライベートバンクとは、富裕層向けに資産管理や運用サービスを提供する機関です。スイスやアメリカ、シンガポールなど、国内外の銀行や証券会社が事業の一環としてプライベートバンクサービスを展開していることが多く見られます。
専門チームが豊富なノウハウを活かし、顧客の目標に合わせたアドバイスや運用プランを提案します。また、資産運用の相談だけではなく相続や事業継承、税務、法務に関する相談も可能です。
取り扱う金融商品は、株式や債券に加え、ヘッジファンド、私募仕組債、優先出資証券など多岐にわたります。プライベートバンクの利用には、数千万円から数億円の資産が必要とされることが一般的です。
プライベートバンクで受けられるサービス
プライベートバンクで受けられる主なサービスは、以下のとおりです。
●ポートフォリオの提案
資産状況や顧客の要望に合わせて、国内外の株式、債券、不動産、ヘッジファンドなど、多様な投資商品やポートフォリオを提案します。
●資産の運用
決定したポートフォリオにもとづき、株式や債券、投資信託、ヘッジファンドなどで資産を運用します。運用状況について、定期的に報告があります。
●ファイナンシャルプランニング
顧客やその家族のライフプランや資産状況にもとづいた、長期的な資産運用計画の策定・提案を行います。
●税務アドバイス
資産状況や家族構成に応じて相続税対策などの税務に関するアドバイスを受けられます。アドバイスを受けることで、大幅な節税が実現できる可能性があります。
●専門家の紹介
プライベートバンクにも知識が豊富なバンカーが在籍していますが、必要に応じて、弁護士や税理士、司法書士、行政書士などの専門家を紹介してもらうことができます。
●海外取引のサポート
海外の商品・サービスを取引する際のサポートを行います。
●事業継承の計画立案
税務や財務の観点から、将来の事業継承に関する計画を提案してもらえます。
●医療施設や老人ホームの情報提供
最新の国内外の医療施設や高級老人ホームの情報を提供します。顧客やその家族のニーズや資産状況に応じた情報を得ることで、最適な医療施設や高級老人ホームをスムーズに見つけることができます。
●ブラックカードの発行やオーダーメイド旅行
ブラックカードを発行することで、高額な買い物がよりスムーズに行えます。また、予算やニーズ、スケジュールに応じてオーダーメイドの旅行プランを提案し、国内外の有名ホテルや人気レストラン、ゴルフ場、プライベートジェットなど、施設や移動手段などの手配も行います。
●セミナーやイベント案内
顧客の関心に応じて、人気のセミナーやイベントの案内や招待を行います。希少価値の高いセミナーやイベントへの参加も可能です。
●教育サービスの提供
子どもの受験や海外留学に関する情報を提供しています。ニーズに合わせた最新情報をスピーディーに入手できます。
●オークションの代理
顧客に代わって、宝石、絵画、ワインなどのオークションに参加します。
●募金などの社会貢献活動
募金などの社会貢献活動に関する情報の提供や提案を行います。
●遺言管理
遺言書の作成や管理に関するサポートを行います。
●限定商品の提供
希少価値の高い限定商品の情報提供や購入サポートを行います。
●不動産に関するサポート
自宅や別荘など不動産の売買サポートや簡易査定、相続税評価、修繕・リフォーム会社の紹介などを行います。
このように、プライベートバンクを利用することで、さまざまなサービスを受けることができます。いずれも、顧客の要望や資産状況、家族構成に応じて提供されます。
さらに、上記以外のサービスやサポートも受けることができます(ビジネス支援、相談相手、法人の資産運用スキームの提案など)。
いくらから利用できる?
資産がいくらから利用できるかは、プライベートバンクによって異なります。これは、プライベートバンクによって取り扱う商品や提供するサービス、ターゲットとする顧客層に違いがあるためです。ただし、多くのプライベートバンクは、具体的な資産額の基準を公表していません。
一般的には、国内のプライベートバンクを利用するには、資産が5,000万円以上必要とされています。ただし、この資産の基準には不動産などの固定資産は含まれず、預金や有価証券などの流動資産が対象です。また、5,000万円はあくまで一つの目安であり、プライベートバンクによっては1億円以上の資産が必要な場合もあります。
スイスやシンガポール、アメリカ、イギリスなどの海外のプライベートバンクは、国内のプライベートバンクよりも資産基準が厳しく設定されています。
なお、プライベートバンクには独自の審査があるため、資産基準を満たしていても必ずしも利用できるわけではありません。仕事内容や収入状況、口座開設の目的などによっては、利用できない場合があることも理解しておく必要があります。
このように、プライベートバンクの口座を開設するには、一定額の資産と信頼関係が求められます。
一般的な銀行との違い
プライベートバンクと通常の銀行では、業務内容や金融商品、手数料、利回り、審査基準などに違いがあります。
プライベートバンク | 通常の銀行 | |
---|---|---|
主な業務・サービス | 資産管理資産運用税務アドバイスなど | 預金業務融資業務為替業務など |
取り扱う金融商品 | ヘッジファンド私募仕組債私募投信優先出資証券など | 投資信託国債など |
手数料 | 資産基準手数料固定報酬成功報酬売買手数料など | 売買手数料信託報酬信託財産留保額など |
利回り | 3.0%〜10.0%程度 | 2.0%〜8.0%程度 |
担当者 | 専属担当が付く長期的サポート | 転勤や異動で担当が変わる場合がある |
口座開設の審査基準 | 資産額最低預入金額職業など | 特になし(反社会的勢力などの場合は不可) |
通常の銀行は預金、融資、為替業務などを行いますが、プライベートバンクは顧客の資産管理、資産運用、税務アドバイスなどを専門としています。さらに、事業継承の計画立案や医療施設・老人ホームの情報提供、セミナーやイベントの案内など、幅広いサービスを提供しています。
また、通常の銀行が取り扱う金融商品は投資信託や国債など比較的シンプルなものであり、複雑な商品は取り扱いません。一方、プライベートバンクでは、ヘッジファンドや私募仕組債、優先出資証券など、一般の個人投資家が購入できない複雑な商品も取り扱い、顧客の資産状況や要望に応じたオーダーメイドの運用プランを提案します。
通常の銀行では、相談のたびに担当者が変わったり、転勤や異動によって担当者が変更されることがあります。そのため、長期的に同じ担当者からサポートを受けるのは難しいです。プライベートバンクでは専属の担当者が付き、異動や転勤がないため、同じ担当者から一貫したサポートを受けることができます。
以下では、プライベートバンクと通常の銀行の手数料、利回り、審査基準の違いについて詳しく見ていきましょう。
手数料
通常の銀行では、投資信託や国債などを取り扱っています。例えば、投資信託には以下の手数料がかかります。
手数料 | 内容 |
---|---|
購入時手数料 | 投資信託購入時にかかる手数料。証券会社や銀行などの販売会社に支払う。購入時手数料が0円(ノーロード)の商品も多い。 |
信託報酬(運用管理費用) | 投資信託保有中にかかる手数料。信託財産の中から、運用会社、販売会社、信託銀行に支払われる。商品によって0.1%〜2.5%程度かかる。 |
信託財産留保額 | 投資信託解約時にかかる手数料。信託財産留保額がない商品もある。 |
一方、プライベートバンクでは、次のような手数料がかかります。
手数料 | 内容 |
---|---|
資産基準手数料 | ほとんどのプライベートバンクで発生する手数料。顧客の預かり資産額に応じて手数料が発生する。例えば、預かり資産が2億円で手数料率が1%の場合、手数料は200万円。手数料率はプライベートバンクによって異なり、一般的に1.0%〜2.5%程度です。手数料が一律であるため、取引回数が増えても手数料の負担は変わらない。 |
固定報酬 | 預かり資産額に関わらず、定額で設定される手数料。取引回数や運用成果によって変動することもない。固定報酬とサービス内容を比較することで、割高かどうかを判断しやすくなる。 |
売買手数料 | 金融商品を売買する際に発生する手数料で、取引回数が増えるほど手数料の負担も大きくなる。プライベートバンクによって手数料率には差があり、一般的には0.1%〜1.5%程度。外資系プライベートバンクは、日系のプライベートバンクよりも手数料が低いことがある。 |
成功報酬 | 預かり資産の増加額に対して一定の割合でかかる手数料。手数料率はプライベートバンクによって異なり、概ね15%〜20%程度。成功報酬は資産の増加額から支払われるため、別途手出しする必要はない。例えば、資産が3億円から3億2,000万円に増加し、手数料率が15%の場合、成功報酬は300万円。成功報酬があることで、顧客とプライベートバンクの方向性が一致しやすい。 |
このように、プライベートバンクではさまざまな手数料が発生し、通常の銀行と比べて負担が大きくなることがあります。その分、提供されるサービスは充実していますが、事前にかかる手数料や負担を理解しておくことが大切です。
利回り
プライベートバンクと通常の銀行では、取り扱う商品が異なるため、利回りにも差があります。通常の銀行は一部の投資信託や国債を扱っており、投資信託の利回りはおおよそ2%〜8%程度です。中には年間リターンが10%を超えるファンドもあれば、2%を下回るファンドも存在します。例えば、三井住友トラスト・アセットマネジメントの「世界経済インデックスファンド」の年間リターンは+15.04%です(2024年8月9日時点)。
国債の場合は、利回りが非常に低くなります。
●個人向け国債
・変動金利型10年満期:0.61%
・固定金利型5年満期:0.39%
・固定金利型3年満期:0.28%
※税引前
※2024年8月8日〜8月30日募集分
一方、プライベートバンクは私募投信や私募債券、優先株、優先出資証券など幅広い商品を取り扱い、顧客のニーズに応じたオーダーメイドの資産運用プランを提供しています。プライベートバンクの利回りは公表されていませんが、一般的には3%〜10%程度とされ、通常の銀行よりもやや高めです。ただし、ヘッジファンドなどで運用するため、さらに高い利回りを実現できる可能性もあります。
このように、プライベートバンクと通常の銀行では、取り扱う商品や利回りに違いがあるため、その点を理解しておくことが大切です。
参考:財務省「個人向け国債」
審査基準
プライベートバンクと通常の銀行では、審査基準に違いがあります。
通常の銀行では、預金口座を開設する際に特に厳しい審査は行われません。名前や住所、職業などの基本的な個人情報を提出して年齢基準を満たしていれば、ほとんどの場合、審査は通過します。
収入条件もないため、アルバイトをしていない学生やニートでも口座開設は可能です。また、ネット銀行であれば、スマホから簡単に口座開設の手続きを行うことができます。
ただし、反社会的勢力やマネーロンダリング目的の場合は、審査に通ることはありません。
一方、プライベートバンクの口座開設は、厳しい審査が行われます。
審査基準はプライベートバンクによって異なりますが、一般的には資産額や預入金額、資産の構築方法、収入、職業、納税状況などが確認されます。
例えば、資産額がプライベートバンクの基準に達していない場合、門前払いされることもあるため注意が必要です。また、審査ではさまざまな要素が総合的に評価されるため、資産額などが基準を満たしていても、必ずしも口座を開設できるわけではありません。
「プライベートバンクは、多額の預金や有価証券を持っていても、利用できない場合がある」という点を理解しておく必要があります。
また、審査には時間がかかることがあるため、スケジュールに余裕を持って申請することが大事です。
資産運用・資産管理でプライベートバンクを活用するメリット
プライベートバンクを利用するメリットには、ニーズに合わせたオーダーメイドの資産運用が可能であること、投資の選択肢が豊富であること、利回りが高いことなどが挙げられます。
これらのメリットを理解することで、プライベートバンクが自分に適したサービスかどうかを判断しやすくなります。
ここでは、資産運用や資産管理でプライベートバンクを活用するメリットについて見ていきましょう。
自分に合ったオーダーメイドの資産運用ができる
資産運用や資産管理において、プライベートバンクを利用するメリットの一つは、自分に合ったオーダーメイドの運用ができる点です。
プライベートバンクでは、担当者が顧客の運用に関する要望や資産状況、将来のライフプランなどを丁寧にヒアリングし、豊富な商品から適切なポートフォリオや運用プランを提案します。
また、税金や相続なども考慮しながら、顧客の目標達成に向けたサポートを行います。
例えば、通常の銀行でも資産運用に関するアドバイスは受けられますが、手数料収入の関係で自社に有利な商品を推奨されることも多いです。そのため、顧客のニーズに合った運用プランが実現できない場合があります。
一方、プライベートバンクは固定報酬や成功報酬を受け取るため、顧客にとって最適なプランを提案しやすく、より高いリターンが期待できます。顧客が掲げる資産運用の目標に対して、最適な方法でアプローチすることが可能です。
さらに、通貨の急激な変動や株安が発生した際にも、専属の担当者に相談し、適切な対策を見つけることができます。
オーダーメイドのポートフォリオで資産運用できることは、プライベートバンクの大きな魅力です。
投資の選択肢が多い
投資の選択肢が多いことも、資産運用や資産管理でプライベートバンクを活用するメリットと言えます。
プライベートバンクでは、株式や債券、投資信託などの他に、ヘッジファンド、私募仕組債、生命保険、外貨預金、CATボンド、優先出資証券、海外不動産など、さまざまな商品に投資が可能です。
例えば、ヘッジファンドは私募形式で資金を集め、絶対収益を目指し、多様な投資手法を活用して利益を追求します。相場が上昇しているときも、下落しているときも利益を狙うことが可能です。また、CATボンドでは災害保険に投資でき、ニーズに応じて外貨預金や生命保険を利用して運用することもできます。
先物取引や信用取引なども可能であり、海外不動産への投資も検討できます。
特に海外のプライベートバンクは積極的な運用に強く、複雑な金融商品も取り扱い、目標達成のために最適なポートフォリオを幅広い選択肢から構築することが可能です。
一般的な銀行よりも利回りが高い
資産運用でプライベートバンクを利用するメリットは、一般的な銀行よりも利回りが高い点です。
プライベートバンクと一般的な銀行の利回りの目安は、以下のとおりです。
・プライベートバンク:3.0%〜10.0%程度
・一般的な銀行:2.0%〜8.0%程度
一般的な銀行では、投資信託や定期預金、債券などの商品が主に取り扱われており、選ぶ商品によっては利回りが1%を下回ることもあります。例えば、個人向け国債の利回りは0.3%〜0.6%程度であり、定期預金の金利は0.025%〜0.3%程度です(2024年8月10日時点)。
一方、プライベートバンクではヘッジファンド、不動産、先物取引、信用取引など、さまざまな投資オプションが用意されており、経験豊富な専門チームが運用を担当するため、高い利回りが期待できます。また、顧客のニーズに合わせた運用プランを提案してくれるため、積極的な運用を望む場合、10%を超える利回りを目指すことも可能です。
プライベートバンクは成功報酬を導入しており、顧客の資産をどれだけ増やせるかが収益に直結するため、資産運用に非常に力を注いでいます。結果に絶対はありませんが、高い利回りが期待できる点がプライベートバンクの魅力です。
※参考:財務省「個人向け国債」
三菱UFJ銀行「円預金金利」
長期的な信頼関係を築くことができる
長期的な信頼関係を築くことができる点も、プライベートバンクを利用するメリットの一つです。
一般的な銀行の場合、転勤や異動があるため、長期間同じ担当者がサポートを続けるのは難しいです。銀行にもよりますが、転勤や異動で2〜3年ごとに担当者が変わることもあります。担当者が変わっても顧客情報は引き継がれますが、アドバイスや情報が前任者と異なることがあり、顧客が混乱する可能性があります。一貫したサポートを受けるのが難しくなる場合があるため注意が必要です。
一方、プライベートバンクでは担当者の転勤や異動が少ないため、長期にわたり同じ担当者がサポートを続けることができます。そのため、一貫したサポートを受けられ、長期的な信頼関係を築くことができます。信頼関係が築かれることで、安心して任せることができ、顧客のニーズに合わせたより適切なサービスを受けることが可能です。
資産運用・資産管理でプライベートバンクを活用するデメリット
資産運用や資産管理にプライベートバンクを利用するデメリットには、資産額によってはメリットが少ないことや、手数料が高くなる可能性があることが挙げられます。
メリットだけでなく、デメリットも把握しておくことが重要です。
ここでは、資産運用や資産管理でプライベートバンクを利用するデメリットについて見ていきましょう。
資産額によってはプライベートバンクを活用するメリットが少ない
資産運用におけるプライベートバンクのデメリットの一つは、資産額が少ない場合にそのメリットを十分に享受できない点です。プライベートバンクは、資産運用に関する豊富なノウハウを持つ専門チームが適切なプランで運用しますが、資産額が少ないと得られる利益も限られることがあります。
プライベートバンクの利回りは3%〜10%程度ですが、積極的な運用を行えばさらに高い利回りを狙うこともできます。ただし、利回りが高くても運用額が小さい場合、大きなリターンを得るのは難しいことを理解しておく必要があります。
資産に比例して手数料も高くなる
プライベートバンクのデメリットの一つは、資産額に応じた高額な手数料がかかることです。プライベートバンクでは、資産基準手数料、固定報酬、売買手数料、成功報酬などが発生します。
資産基準手数料は資産額に応じて1%〜2%程度です。例えば、資産が1億円の場合、100万円〜200万円の手数料がかかります。また、運用によって資産が増えた場合、その増加分に対して15%〜20%の成功報酬が発生します。例えば増加分が3,000万円であれば、450万円〜600万円の手数料が必要です。
手数料が高額であるため運用益が十分でないと、実際の利益を感じにくくなることがあるので、注意が必要です。
審査が厳しく新規参入が難しい
プライベートバンクは誰でも利用できるわけではありません。利用には審査があり、資産額や最低預入金額、職業、資産構築方法、納税状況、金融資産以外の資産など、さまざまな要素が評価されます。
そのため、資産額が条件を満たしていても、審査に通らないことがあるため注意が必要です。
一般的な銀行では審査に落ちることはほとんどありませんが、プライベートバンクの審査は厳しいため、軽く考えすぎるのは禁物です。また、プライベートバンクによっては、紹介が必要な場合もあります。
日本と海外のプライベートバンクどちらがいいのか?
日本国内のプライベートバンクは、日本語での対応や国内の税務・法務に精通していることが特徴です。一方、海外のプライベートバンクは長い歴史があり、積極的な資産運用に優れています。
それぞれの特徴を理解することで、自分に最適なプライベートバンクを見つけやすくなります。
ここでは、日本国内と海外のプライベートバンクの特徴について詳しく見ていきましょう。
日本国内のプライベートバンクの特徴
日本国内のプライベートバンクの主な特徴は、以下のとおりです。
・日本語対応
・急な変更にも迅速に対応
・国内の税制に詳しい
・国内の法務に精通
・保守的な運用が得意
・わかりやすい金融商品を提供
・海外に比べて必要な資産額が少ない
国内のプライベートバンクは日本語での対応が可能なため、コミュニケーションが取りやすく、ニュアンスの違いによる誤解を防げます。急な変更にも迅速に対応が可能です。また、所得税、相続税、贈与税など、税務に精通しているのも特徴です。控除の特例条件など頻繁に変わる最新情報を把握し、適切なプランを提供します。
さらに、不動産取引や事業継承、相続などの法律にも詳しく、トラブルを回避しながらスムーズに進めることができます。
保守的な運用が得意な国内のプライベートバンクは、リスクを抑えた運用を希望する方に特におすすめです。海外のプライベートバンクに比べ、取り扱う商品がシンプルでわかりやすく、安心感があります。
各地にプライベートバンクの窓口を展開している機関もあり、どこからでも気軽に相談できる点も魅力です。弁護士や公認会計士、税理士など、外部の日本人専門家を紹介してもらうことも可能です。
また、海外のプライベートバンクを利用するには、預入金額が1億〜2億円、場合によっては5億円以上必要なこともあります。一方、国内のプライベートバンクは、3,000万〜5,000万円程度から利用できるケースも多いです。
取引のしやすさや税務・法務に関する相談を重視するなら、国内のプライベートバンクが適している可能性があります。
海外ののプライベートバンクの特徴
海外のプライベートバンクの主な特徴は、以下のとおりです。
・積極的な運用が得意
・さまざまな金融商品を提供
・豊富な資産運用のノウハウ
・国内のプライベートバンクより長い歴史
・世界中の富裕層向けサービスを展開
国内のプライベートバンクは保守的な運用に強みがありますが、海外のプライベートバンクは積極的な運用に優れています。海外のプライベートバンクは長い歴史を持ち、資産運用に関する専門知識とノウハウが豊富です。幅広い金融商品を取り扱い、高いリターンを目指すことが可能です。さらに、多くのプライベートバンクはグローバルに展開し、世界中の富裕層を対象としたサービスを提供しています。
運用資金が多い場合や高いリターンを追求したい場合、また世界中の富裕層と同じサービスを受けたい場合には、海外のプライベートバンクが適しているかもしれません。
日本の主なプライベートバンク一覧
日本の主なプライベートバンクは、以下のとおりです。
●証券会社系プライベートバンク
・野村證券
・大和証券
・SMBC日興証券
・みずほ証券
・三菱UFJモルガン・スタンレー証券
・香川証券 など
老舗の野村證券では、資産運用をトータルにサポートするウェルス・マネジメントサービスを提供しています。中長期投資を前提としたプランを提案・運用し、ポートフォリオの状態は日々確認できます。不動産を活用した戦略的な借り入れも可能です。さらに、富裕層向けに野村SMA(エグゼクティブ・ラップ)の提供やセンチュリオンカードの発行も行っています。
また、大和証券のプライベートバンク「ダイワのプライベートバンキング」では、資産管理、自社株管理、借り入れ、不動産売買、保険、寄付、リースなど、幅広いサービスを提供しています。税理士や公認会計士の資格を持つ専任のソリューションチームが対応し、グループ会社とも連携したサポートを受けることが可能です。
香川証券では、プライベートバンクと提携し、富裕層向けの特別プログラムを提供しています。資産保全や内部留保資産の有効活用、財務課題の解決など、ウェルスコンサルティングを行っています。
●銀行系プライベートバンク
・三菱UFJ銀行
・みずほ銀行
・三井住友銀行
・三井住友信託銀行
・りそな銀行
・千葉銀行
・静岡銀行
・琉球銀行
・十六銀行
・横浜銀行
・SMBC信託銀行
・三菱UFJ信託銀行
・三井住友信託銀行 など
三菱UFJ銀行の「MUFGウェルスマネジメント」では、顧客の人生の目標を把握し、その実現に向けた適切なプランを提案します。外部の税理士事務所や会計事務所、コンサルタント会社と連携し、事業継承、資産運用、資金調達、不動産活用などのさまざまなソリューションサービスを提供しています。
SMBC信託銀行の「プライベートバンキング」では、富裕層向けにプライベートバンキング定期預金を提供しており、18種類の通貨での運用が可能です。円や外貨定期預金などを担保にしたプライベートバンキング専用のローンも利用できます。他にも、遺言代用信託や受益者連続信託、不動産仲介、美術品信託、有価証券管理信託なども扱っているのが特徴です。
りそな銀行のプライベートバンクでは、弁護士や中小企業診断士などの外部スペシャリストと、りそなグループの総合力を活用して顧客をサポートします。プライベートバンキング部門に属する経験豊富なプレミアコンサルタントが、顧客のニーズや状況をヒアリングし、最適なプランを提案します。りそな銀行、埼玉りそな銀行、関西みらい銀行、みなと銀行にコンサルタントの拠点があり、相談しやすい環境が整っている点も魅力です。
このように、国内の多くの金融機関や証券会社がプライベートバンクやウェルスマネジメントを提供しています。ただし、ほとんどの機関では具体的な預入金額などの条件を公表していません。また、サービス内容が変更や縮小される可能性もあるため、プライベートバンクやウェルスマネジメントの利用を検討する際は、必ず最新情報を確認することが大切です。
海外の主なプライベートバンク一覧
海外の主なプライベートバンクは、以下のとおりです。
・UBS(ユービーエス)
・クレディスイス
・レイセオン・フィナンシャル
・メリルリンチ・ウェルス・マネジメント
・バークレイズ・ウェルス・マネジメント
・ゴールドマン・サックスプライベートウェルス マネジメント
・ピクテ
・HSBC(エイチエスビーシー)
・ジュリアス・ベア
・ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド・プライベート・バンキング
・ボントーベル
・バンク・オブ・シンガポール
・DBS(ディービーエス)
・LGT(エルジーティー)
・UOB(ユーオービー)
・ロンバー・オディエ
・エドワード・ジョーンズ
・バンク・オブ・アメリカ
・イーエフジー・インターナショナル
・ジェイ・サフラ・サラシン
・モルガンスタンレー
UBSは、150年以上の歴史を持ち、スイスを代表する金融機関です。アセットマネジメント、ウェルスマネジメント、プライベートバンキングなどのサービスを提供し、世界中の幅広い顧客層に対応しています。UBSのプライベートバンクでは、最低預入金額が2億円以上と言われています。
クレディスイスは、チューリッヒに本社を構える老舗の金融機関です。長年にわたりプライベートバンクのサービスを提供しており、世界中の多くの富裕層が利用しています。最低預入金額は5億円以上とされています。なお、クレディ・スイスは2023年にUBSグループに買収されました。
HSBCはイギリスの大手金融機関で、グローバルにサービスを展開しています。2023年にはインドでプライベートバンク事業を開始しました。かつてアジア最大のウェルスマネジメントを誇っていましたが、UBSがクレディ・スイスを買収したことで首位の座を奪われました。しかし、再び首位を目指し、人員の引き抜きや増員などを通じてウェルスマネジメント事業の強化に取り組んでいます。
1890年に設立され、スイスのチューリッヒに本社を構えるジュリアス・ベアは、投資コンサルティングとウェルスマネジメントを展開し、高い専門性を誇ります。2018年に野村ホールディングスが出資したことで、ジュリアス・ベア ウェルス マネジメント リミテッドは持分法適用会社となり、ジュリアス・ベア ノムラウェルスマネジメントが誕生しました。
スイスの老舗プライベートバンク、ロンバー・オディエは、最低預入金額が1億円以上で、金融資産が3億円以上ないと利用が難しいとされています。設立から200年以上の歴史を持ち、多くの富裕層から支持を受けています。
DBSは、シンガポール最大の銀行です。香港でプライベートバンカーの増員を図るなど、アジアでの展開を強化しています。プライベートバンク、ウェルスマネジメント、保険、クレジットカードなど多岐にわたる事業を展開しています。
バンク・オブ・アメリカは1784年に創業され、アメリカに本店を構える世界有数の金融機関です。プライベートバンク部門は、最低300万ドルの資産を持つ富裕層を対象にサービスを提供しています。また、銀行業務、国際銀行業務、不動産融資、資産管理など、幅広い事業を世界中で展開しています。
このように、スイス系やアメリカ系など、世界には多くの歴史ある大規模なプライベートバンクが存在します。
まとめ
プライベートバンクを利用するには、一定以上の保有資産は預入資産が必要ですが、資産運用や資産管理など、さまざまなサービスを受けられます。ヘッジファンド、私募仕組債、優先出資証券などの幅広い金融商品を提供し、一般的な銀行よりも高い利回りが期待できます。また、事業継承、相続、子どもの留学など、さまざまな相談が可能です。
国内のプライベートバンクは、海外に比べて必要な資産額が少なく、利用しやすいのが特徴です。
プライベートバンクに興味がある方は、ぜひ利用を検討してみてください。