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共有持分買取|不動産の買取請求をされた時の対処法と流れを解説

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檜垣知宏:宅地建物取引士

この記事のポイント

  • 共有持分の買取請求には、任意の交渉と民法に基づく強制力のある権利行使の2種類があります。

  • 買取請求をされた場合、売却に応じる、相手の持分を買い取る、業者に売る、弁護士に相談するなどの対処法があります。

  • トラブルを避けるため、請求のやり取りは証拠を残し、時価相当額で取引することが重要です。

不動産を複数人で共有している状況で、他の共有者から共有持分の買取請求をされて対応に困ることがあります。
買取請求には、当事者間の話し合いによるものと、法律の規定に基づくものがあり、それぞれ対処法が異なります。
この記事では、共有持分の買取請求をされた場合の具体的な対処法や法的な手続きの流れ、そしてトラブルを解決するためのさまざまな選択肢について解説します。

不動産の共有問題は複雑化しやすいため、正しい知識を持って冷静に対応することが求められます。

目次

そもそも共有持分の買取請求とは?2つの種類を解説

共有持分の買取請求とは、共有名義となっている不動産において、一部の共有者が他の共有者に対して、自身の持分を買い取るよう求める行為を指します。
この買取請求は、大きく分けて2つの種類に分類されます。

一つは、共有者間の話し合いをベースとした任意の交渉であり、もう一つは、民法に定められた特定の要件を満たした場合に行使できる、法的な権利としての買取請求です。
両者はその性質や強制力が大きく異なるため、どちらのケースに該当するのかを正しく理解することが、適切な対応の第一歩となります。

他の共有者にお願いする任意の買取交渉

共有関係から抜けたい共有者が、他の共有者に対して「自分の持分を買い取ってほしい」とお願いする形で行われるのが、任意の買取交渉です。
この交渉には法的な強制力はなく、あくまで当事者間の合意に基づいて成立します。
買取価格や支払い条件なども、すべて話し合いによって自由に決定されます。

もし他の共有者が買取に同意し、価格面でも折り合いがつけば、売買契約を締結して持分を移転させることで、円満に共有関係を解消できます。
しかし、相手が交渉に応じなかったり、提示された買取価格に納得できなかったりした場合は、この方法で解決することは難しくなります。

民法に基づく強制力のある買取請求権の行使

2023年4月1日に施行された改正民法により、特定の条件下で他の共有者の持分を強制的に買い取れる「共有持分買取権」が新設されました。
これは、共有者の一人が固定資産税や管理費といった共有不動産に関する負担義務を、催告を受けたにもかかわらず1年以内に履行しない場合に、他の共有者がその共有者の持分を時価で買い取ることができる権利です。

この権利は、行使する旨の通知が相手に到達した時点で、相手の同意なく売買契約が成立したとみなされる強力なもの。
任意の交渉とは異なり、法律に基づいた強制力を伴う手続きである点が最大の特徴です。

共有持分の買取請求権を行使するための条件

民法上の共有持分買取権を行使するためには、厳格な条件を満たす必要があります。
まず、対象となる共有者が、共有物にかかる管理費、修繕積立金、固定資産税などの負担を履行していないことが大前提です。
その上で、他の共有者が「相当の期間」を定めて、滞納している費用の支払いを催告しなければなりません。

そして、この催告をしたにもかかわらず、1年以内にその共有者が負担を履行しなかった場合に、初めて共有持分買取権の行使が可能となります。
この一連の条件が一つでも欠けている場合、一方的に持分を買い取ることはできません。
この権利は、あくまで負担義務を果たさない共有者との共有関係を解消するための最終的な手段と位置づけられています。

民法上の共有持分買取請求権を行使する手続きの流れ

民法に定められた共有持分買取請求権を行使する場合、法律に則った正確な手続きを踏むことが不可欠です。
この手続きは、滞納者への催告から始まり、買取請求の通知、買取価格の協議という順で進められます。
当事者間の話し合いで価格が決まらない際には、裁判所が関与する訴訟へと発展する可能性もあります。

最終的には、決定した対価の支払いと不動産の持分移転登記をもって完了します。
ここでは、一連の手続きを6つのステップに分けて具体的に解説します。

ステップ1:管理費用の支払い催告を内容証明郵便で送る

買取請求権行使の最初のステップは、管理費用などを滞納している共有者に対し、支払いを催告することです。
この催告は、後のトラブル回避と証拠保全の観点から、配達証明付きの内容証明郵便で送付するのが一般的です。
内容証明郵便を利用すれば、送付日、差出人、受取人、そして文書の内容を郵便局が公的に証明してくれます。

催告書には、滞納している費用の具体的な内訳と合計金額、そして支払いを行うべき「相当の期間」として具体的な期限を明記することが重要です。
この催告を行っても1年以内に支払いがなされなかった場合に、次の段階である買取請求へ進むことができます。

ステップ2:買取請求権を行使する旨を通知する

催告から1年が経過しても滞納費用の支払いが確認できない場合、共有持分買取権を行使する旨を相手方に正式に通知します。
この通知も、ステップ1と同様に内容証明郵便で送付することが確実です。
通知書には、民法第252条の2の規定に基づき共有持分買取権を行使する意思を明確に記載します。
この通知が相手方に到達した時点で、法的には売買契約が成立したものとみなされ、相手方の承諾は不要となります。

この段階で持分を取得する権利は確定しますが、まだ具体的な買取価格の支払いや登記手続きが残っているため、次のステップでそれらを進めていくことになります。

ステップ3:買取価格について当事者間で協議する

買取請求権の行使を通知し、売買契約が法的に成立した後は、具体的な買取価格を決定する段階に移ります。
法律では、買取価格は「時価」と定められているため、まずは当事者間で時価相当額について協議を行います。
適正な時価を把握するためには、不動産鑑定士に鑑定を依頼する方法や、複数の不動産会社から査定を取得し、その平均額を参考にすることが有効です。
近隣の取引事例や公示価格なども参考になります。

この協議で双方が納得できる買取価格で合意できれば、訴訟などを回避し円滑に手続きを進めることが可能です。
相場からかけ離れた価格ではなく、客観的な根拠に基づいた価格提示が重要となります。

ステップ4:話し合いで決まらない場合は裁判所で価格を決定する

当事者間での協議によって買取価格が合意に至らない場合、最終的な解決の場は裁判所に移ります。
具体的には、地方裁判所に対して「共有物に関する訴訟」を提起し、裁判所に買取価格の決定を求めることになります。
訴訟手続きの中では、裁判所が中立的な立場から不動産鑑定士を選任し、その鑑定評価を基に客観的かつ公正な時価を算定します。

そして、裁判所が最終的な買取価格を決定します。
この裁判所の決定には法的な拘束力が伴うため、当事者はその価格に従わなければなりません。
ただし、訴訟は時間と費用を要するため、可能な限り当事者間の話し合いで解決することが望ましいです。

ステップ5:決定した対価を支払い持分を取得する

当事者間の協議または裁判所の決定により買取価格が確定したら、請求者側は相手方に対してその対価を支払います。
この支払いが完了することによって、相手方の共有持分を正式に取得したことになります。
金銭の授受は、後のトラブルを防ぐためにも、銀行振込など取引の記録が明確に残る方法で行うのが賢明です。

支払いと引き換えに、相手方からは持分移転登記に必要となる登記識別情報(権利証)、印鑑証明書、固定資産評価証明書などの書類を受け取ります。
これらの手続きは、司法書士に依頼し、立ち会いのもとで行うことで、安全かつ確実な取引が確保できます。

ステップ6:不動産の持分移転登記を申請する

買取対価の支払いが完了し、登記に必要な書類一式が揃ったら、管轄の法務局にて不動産の持分移転登記を申請します。
この登記手続きを経て、登記簿上の名義が変更されることで、買い取った持分が法的に自分のものであることを第三者に対して主張できるようになります。
これで一連の買取手続きはすべて完了となります。

登記申請は専門的な知識が求められるため、通常は司法書士に依頼して行います。
司法書士に依頼すれば、書類の作成から法務局への申請代行までを任せることができ、手続きを正確かつスムーズに進めることが可能です。

【状況別】共有持分の買取請求をされた時の4つの対処法

他の共有者から共有持分の買取請求をされた際、どのように対応すべきかは、自身の意向や置かれている状況によって異なります。
感情的に対応するのではなく、まずは冷静に相手の要求内容を確認し、自身の希望を整理することが大切です。

ここでは、買取価格に納得して売却に応じるケースから、逆に相手の持分を買い取る場合、第三者である専門業者に売却する選択肢、そして交渉が難航した場合の専門家への相談まで、状況に応じた4つの具体的な対処法を解説します。

対処法1:買取価格に納得できるなら売却に応じる

相手から提示された買取価格が、自分で調べた不動産の相場や査定額と照らし合わせて妥当であり、納得できる水準であれば、その請求に応じて持分を売却するのが最も手早く解決する方法です。
この対処法のメリットは、複雑な交渉や法的な手続きを回避し、迅速に共有関係という制約から解放される点にあります。
また、持分を売却することでまとまった現金を得ることもできます。

ただし、一度売却すればその不動産に対する一切の権利を失うことになるため、安易に即決するのではなく、提示された価格が本当に適正なのかを不動産会社に査定を依頼するなどして、慎重に判断することが重要です。

対処法2:不動産を手放したくないなら相手の持分を買い取る

その不動産に愛着がある、現在居住している、あるいは将来的に活用する計画があるなど、手放したくないと考える場合は、逆に買取請求をしてきた相手方の持分を買い取ることを提案するのも有効な対処法です。
この共有持分の買取が成立すれば、不動産は単独所有となり、以降はリフォームや売却など、すべての意思決定を自分一人で自由に行えるようになります。

ただし、相手の持分を買い取るには、当然ながら時価相当の資金を準備する必要があります。
自己資金で不足する場合は、金融機関からのローンなども含めて資金計画を立て、相手との価格交渉に臨むことになります。

対処法3:相手に売りたくない場合は専門の買取業者へ売却する

買取請求をしてきた相手との関係性が悪く、その相手に自分の持分を売却することに抵抗がある場合や、相手の提示する価格に到底納得できない場合は、自身の持分のみを専門の買取業者へ売却するという選択肢があります。
共有持分を専門的に扱う業者は、権利関係が複雑な不動産であっても現状のままで買い取ってくれるため、他の共有者の同意を得る必要がありません。
特に東京にはそうした業者が多く存在します。

この方法は、面倒な交渉から解放され、スピーディーに現金化できるため、共有関係のトラブルから早期に離脱したい際におすすめです。
ただし、買取価格は市場価格よりも低くなる傾向がある点に留意が必要です。

対処法4:どうしても話がまとまらないなら弁護士に相談する

当事者同士での話し合いが行き詰まり、解決の糸口が見えない場合や、相手の要求が高圧的・一方的である場合には、不動産問題に精通した弁護士に相談することが賢明です。
弁護士が代理人として交渉の窓口になることで、感情的な対立を避け、法的な観点から冷静かつ論理的な話し合いを進めることが期待できます。

また、法的な手続きや権利関係について的確なアドバイスを受けられるため、不利な条件で合意してしまうリスクを減らせます。
交渉が決裂し、最終的に共有物分割請求訴訟など裁判手続きに移行せざるを得なくなった場合でも、そのまま代理人として対応を依頼できるため、一貫したサポートが受けられます。

買取請求以外で共有状態を解消する2つの方法

共有持分の買取請求は、共有名義の不動産に関する問題を解決するための一つの手段に過ぎません。
状況によっては、買取請求以外の方法がより適している場合もあります。
共有者全員の協力が得られるのであれば不動産全体を売却する方法が考えられますし、話し合いが難しい場合は裁判所の手続きを利用することも可能です。

ここでは、共有状態そのものを根本的に解消するための、買取請求以外の代表的な2つの方法について解説します。

他の共有者全員の合意を得て不動産全体を売却する

共有者全員が共有関係の解消に同意しているのであれば、不動産全体を一つの物件として第三者に売却する方法が最も合理的かつ経済的なメリットが大きい選択肢です。
共有持分のみを単独で売却する場合、買い手が限定されるため市場価格よりも安価になりがちですが、不動産全体として売却すれば、通常の市場価格で取引できる可能性が高まります。

売却手続きは不動産仲介会社に依頼し、買主を見つけて契約を進めるのが一般的です。
売却で得られた代金は、各共有者が持つ持分の割合に応じて公平に分配します。
この方法は、共有者間の関係が良好で、協力して手続きを進められる場合に最適な解決策となります。

裁判所に共有物分割請求を申し立てる

共有者間での話し合いがまとまらず、不動産全体の売却も、持分の売買も進まない場合、法的な手段として裁判所に共有物分割請求訴訟を申し立てることができます。
民法上、各共有者は原則としていつでも共有物の分割を請求する権利を持っています。

訴訟が提起されると、裁判所は当事者の主張を聞いた上で、最も公平かつ適切な分割方法を決定します。
分割方法には、土地などを物理的に分ける「現物分割」一人が不動産を取得し他の共有者に対価を支払う「代償分割」、そして不動産を競売にかけ売却代金を分配する「換価分割」があり、不動産の場合は換価分割が命じられることが多いです。
これは共有関係を強制的に解消する最終手段です。

共有持分の買取請求をする際に知っておくべき注意点

共有持分の買取請求は、共有者間のトラブルを解決する有効な手段となり得ますが、手続きを進める上ではいくつかの注意点が存在します。
請求を行う側は、後の紛争を防ぐための証拠の残し方や、価格設定の妥当性、さらには請求自体ができないケースなどについて、事前に正しく理解しておく必要があります。

これらの点を軽視すると、かえってトラブルを深刻化させてしまう可能性もあるため、慎重な対応が求められます。

請求のやり取りは証拠が残る形で行う

共有持分の買取請求に関連する相手方とのコミュニケーションは、必ず書面など後から確認できる証拠が残る形で行うことが極めて重要です。
特に、管理費の支払いを求める催告や、買取請求権の行使を通知する際には、内容証明郵便の利用が不可欠です。
これにより、「いつ、誰が、どのような内容の文書を送ったか」を公的に証明でき、「言った、言わない」という不毛な争いを未然に防ぎます。

また、交渉の過程で合意に至った事項は、その都度合意書や覚書といった書面にまとめ、双方が署名・捺印しておくべきです。
こうした証拠は、万が一交渉が決裂し訴訟に発展した場合に、自身の主張を裏付ける強力な武器となります。

相手の持分は時価相当額で買い取る必要がある

民法に基づく買取請求権を行使する場合、買取価格は法律上「時価」と定められています。
任意の交渉であっても、相場から著しく乖離した不当に低い価格を提示すれば、相手が合意するはずもなく、交渉は決裂します。
適正な買取価格を設定するためには、客観的な根拠が不可欠です。

不動産鑑定士に鑑定評価を依頼したり、複数の不動産会社に査定を依頼して市場価格を把握したりすることが推奨されます。
公平な価格設定は、円満な解決を目指す上で最も重要な要素の一つであり、これを怠ると、たとえ訴訟になっても裁判所に主張を認められない可能性が高くなります。

共有物分割禁止の特約がある場合は請求できない

共有者間で、あらかじめ「一定期間は共有物を分割しない」という特約(共有物不分割特約)を書面で交わしている場合があります。
この特約は最長5年間有効で、更新も可能です。
このような特約が存在する場合、その期間内は原則として共有物分割請求を行うことができません。

そして、民法上の共有持分買取権の行使も、共有物分割の一形態と解釈される可能性があるため、この不分割特約によって制限されると考えられます。
したがって、買取請求を検討する際には、まず登記簿謄本や過去に交わした契約書などを確認し、分割を禁止する特約の有無を必ず確認する必要があります。

まとめ

共有持分の買取請求をされた際は、まずその請求が任意の交渉なのか、民法に基づく権利行使なのかを見極めることが肝心です。
その上で、売却に応じる、相手の持分を逆に買い取る、専門の買取業者へ自身の持分を売却するなど、自身の希望や状況に合わせた対処法を冷静に検討することが求められます。
当事者間での解決が困難な場合は、弁護士などの専門家に相談することも有力な選択肢です。

また、共有関係の解消方法には、不動産全体の売却や共有物分割請求といった手段もあります。
どの方法を選択するにしても、一人で抱え込まず、専門家の助言を得ながら慎重に進めていくことが、円満な解決につながるおすすめの方法です。

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檜垣知宏:宅地建物取引士

株式会社ライフアドバンス代表取締役の檜垣知宏です。 2014年8月に設立し、恵比寿不動産という屋号で賃貸仲介・売買仲介・賃貸管理を行う不動産業者です。 不動産業界歴15年の経験を生かし、 運営しているサービスサイトである「不動産の相談窓口」の運営者も務めております。

保有資格:宅地建物取引士