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マンション売却の減価償却費とは?計算方法と譲渡所得を解説

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檜垣知宏:宅地建物取引士

この記事のポイント

  • マンション売却時の減価償却費は、建物の価値減少分を示す費用で、譲渡所得(売却益)を計算する際に購入代金から差し引くため、税額に直接影響します。

  • 減価償却費の計算には「建物の取得費」「法定耐用年数に応じた償却率」「所有期間」の3つの情報が必要です。

  • 建物の取得費が不明な場合でも、購入時の売買契約書や消費税額、国土交通省の建築費統計などから算出することが可能です。

マンションを売却する際、利益が出ると譲渡所得税がかかります。
この税金を計算する上で重要な役割を果たすのが「減価償却費」です。

減価償却費とは、建物の経年劣化による価値の減少分を費用として計上する考え方で、不動産の売却時には、購入代金からこの減価償却費を差し引いて、現在の資産価値を算出します。
この計算を正しく行うことが、譲渡所得を正確に把握し、適切な納税額を確定させるために不可欠となります。

目次

マンション売却で知っておきたい減価償却費の基礎知識

マンション売却における減価償却費とは、建物の価値が時間とともに減少していく分を、会計上の費用として算出したものです。
建物は年月の経過とともに劣化していくため、その価値は取得時よりも下がっていると考えます。
この価値の減少分を、所有していた期間に応じて計算したものが減価償却費となります。

マンション売却で利益、つまり譲渡所得が出た場合、この譲渡所得に対して税金が課せられますが、その計算過程で減価償却費が必要不可欠です。
売却益を正しく算出し、適切な納税を行うための確定申告において、非常に重要な項目となります。

譲渡所得の算出に減価償却費の計算が必要になる理由

マンション売却時の譲渡所得は、売却価格から「取得費」と「譲渡費用」を差し引いて算出します。
この「取得費」とは、マンションの購入代金や購入時にかかった諸経費の合計額ですが、ここから所有期間中の減価償却費相当額を差し引かなければなりません。
なぜなら、建物は経年劣化により価値が減少しているため、購入した時のままの価値ではないからです。

減価償却費を差し引くことで、売却時点での建物の正しい資産価値が算出され、それに基づいて正確な売却益が確定します。
この譲渡所得の計算を正確に行うために、減価償却費の算出が必要となるのです。

減価償却の対象は「建物部分」のみで土地は含まれない

減価償却という考え方は、時間の経過とともに価値が減少する「減価償却資産」を対象としています。
不動産においては、建物やその付属設備がこれに該当します。
一方で、土地は経年によって価値が減少するものではないと考えられているため、減価償却の対象にはなりません。
したがって、マンションの減価償却費を計算する際は、購入代金総額から土地の価格を除いた、建物部分の価格のみを基に計算を進める必要があります。

売買契約書で土地と建物の価格が分けて記載されていない場合は、固定資産税評価額の比率などを用いて、建物部分の価格を正確に算出することが求められます。

マンションの減価償却費を計算するために必要な3つの項目

マンションの減価償却費を算出するためには、主に3つの項目を正確に把握する必要があります。
それは「①建物の取得費(購入代金)」「②建物の構造によって決まる償却率」「③所有期間を示す経過年数」です。

これらの情報がなければ、正しい計算は行えません。
特に、減価償却の対象は建物部分のみであるため、購入代金の中から建物価格を明確にすることが第一歩となります。
これらの要素を一つずつ確認し、計算式に当てはめることで、売却時の譲渡所得を算出するための基礎となる減価償却費が求められます。

①建物の取得費(購入代金)

減価償却費の計算の基礎となる建物の取得費とは、マンション購入時の建物本体の価格を指します。
購入時の仲介手数料や登記費用なども取得費に含まれますが、減価償却の計算で用いるのは、あくまで建物部分の購入代金です。

売買契約書に土地と建物の価格が個別に記載されていればその金額を用いますが、総額しか記載がない場合は、消費税額から逆算したり、固定資産税評価額の比率で按分したりして、建物部分の取得費を算出する必要があります。
この建物取得費が、減価償却費を計算する上での出発点となるため、正確に把握することが非常に重要です。

②建物の構造によって決まる償却率

償却率とは、建物の価値が1年間でどのくらい減少するかを示す割合のことで、建物の構造によって法律で定められた法定耐用年数に基づいて決まります。
日本のマンションの多くは鉄筋コンクリート造であり、その法定耐用年数は47年と定められています。

この法定耐用年数に応じて、減価償却費の計算に用いる償却率が決定されます。
例えば、居住用として使用していた鉄筋コンクリート造マンションの場合、償却率は0.015と定められています。
事業用(賃貸など)の場合は異なる償却率が適用されるため、物件の用途と構造を正しく確認することが必要です。

③所有期間を示す経過年数

経過年数は、マンションを取得した日から売却した日までの所有期間を指し、この期間に応じて減価償却費を計算します。
注意点として、計算上の経過年数は、6ヶ月以上の端数は1年に切り上げ、6ヶ月未満の端数は切り捨てて算出するルールとなっています。
例えば、10年7ヶ月所有した場合は11年として計算します。

建物の取得費がわからない場合の確認方法

特に中古マンションを売却する場合など、購入から時間が経過し、売買契約書を紛失してしまったために建物の取得費がわからないというケースがあります。
取得費が不明だと正確な減価償却費を計算できず、結果的に譲渡所得を正しく算出できません。

しかし、取得費を証明する書類がない場合でも、いくつかの代替方法によって取得費を確認、または推計することが可能です。
諦めずにこれらの方法を試すことで、適切な税務申告につなげることができます。

売買契約書で建物の価格を調べる

建物の取得費を確認する最も確実な方法は、購入時の売買契約書を見返すことです。
契約書には売買代金の総額だけでなく、土地と建物の価格の内訳が記載されていることが一般的です。
もし内訳がない場合でも、消費税額の記載があれば、そこから建物価格を算出可能です。
中古マンションの個人間売買などを除き、不動産会社から購入した場合、土地には消費税がかからず建物にのみ課税されるためです。

万が一、契約書を紛失してしまった場合は、購入の仲介を担当した不動産会社に問い合わせてみましょう。
契約書の写しを保管している可能性があります。

購入時の消費税額から建物の価格を算出する

売買契約書に売買代金の総額と消費税額しか記載されていない場合でも、建物価格を正確に割り出すことが可能です。
不動産取引では、課税対象が建物部分のみであり、土地は非課税となっています。
そのため、契約書に記載された消費税額を、そのマンションを購入した当時の消費税率で割り戻すことにより、建物本体の価格が算出できます。

例えば、消費税額が160万円で当時の税率が8%だった場合、「160万円÷8%」で建物価格は2,000万円となります。
この方法は、建物の取得費を明確にするための信頼性が高い手段の一つです。

標準的な建築費から建物の価格を推計する

売買契約書がなく、消費税額もわからない場合の最終手段として、国土交通省が公表している「建物の標準的な建築価額」を参考にして取得費を推計する方法があります。
これは、建物の構造(鉄筋コンクリート造など)と建築年ごとに、1平方メートルあたりの標準的な建築単価を示した統計データです。
売却するマンションの専有面積に、該当する年の建築単価を乗じることで、建築当時の建物価格を概算します。

ただし、これはあくまで推計値であるため、実際の購入価格とは乖離が生じる可能性があります。
この方法を用いる際は、事前に税務署や税理士に相談することが望ましいです。

【用途別】マンションの減価償却費の計算方法をシミュレーション

マンションの減価償却費は、その物件を居住用(マイホーム)として使用していたか、事業用(賃貸物件など)として使用していたかによって、適用される計算式が異なります。
特に償却率の考え方が違うため、計算結果に大きな差が生まれます。
自身のマンションがどちらの用途に該当するかを正しく判断し、適切な計算方法を用いることが重要です。

ここでは、それぞれのケースについて具体的な数値例を挙げたシミュレーションを行い、計算方法の違いを分かりやすく解説します。

居住用マンション(マイホーム)の計算式と具体例

マイホームとして使用していた居住用マンションの減価償却費は、旧定額法に基づいて計算します。
計算式は「建物取得費×0.9×償却率×経過年数」です。
鉄筋コンクリート造の場合、法定耐用年数47年の1.5倍の年数で償却するため、償却率は0.015を用います。

具体例
建物取得費:3,000万円
構造:鉄筋コンクリート造(償却率0.015)
経過年数:15年
この場合、減価償却費は「3,000万円×0.9×0.015×15年=607.5万円」となります。
計算式の「0.9」は、売却時の資産価値を10%残すという考え方に基づいています。

事業用マンションの計算式と具体例

賃貸に出していたなど、事業用マンションとして使用していた場合は、定額法で減価償却費を計算します。
計算式は「建物取得費×償却率×経過年数」となり、居住用のように0.9を乗じる必要はありません。
鉄筋コンクリート造の場合、法定耐用年数47年に対応する償却率0.022を使用します。

この事業用マンションの場合、減価償却費は「3,000万円×0.022×15年=990万円」となります。
同じ条件でも、用途によって減価償却費に大きな差が出ることがわかります。

まとめ

マンション売却において、減価償却費の計算は譲渡所得を正しく把握し、適切な納税額を算出するために欠かせない手続きです。
減価償却費は、建物の取得費、構造に応じた償却率、そして所有期間である経過年数という3つの要素から算出されます。

この計算により、売却時点での建物の資産価値が明らかになり、売却価格からその価値(取得費から減価償却費を引いた額)を差し引くことで課税対象の譲渡所得が確定します。
取得費が不明な場合でも確認する方法は存在しますが、計算は複雑な側面も持ちます。
不明な点があれば、税理士をはじめとする専門家へ相談することも検討すべきです。

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檜垣知宏:宅地建物取引士

株式会社ライフアドバンス代表取締役の檜垣知宏です。 2014年8月に設立し、恵比寿不動産という屋号で賃貸仲介・売買仲介・賃貸管理を行う不動産業者です。 不動産業界歴15年の経験を生かし、 運営しているサービスサイトである「不動産の相談窓口」の運営者も務めております。

保有資格:宅地建物取引士