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不動産決済の流れ|決済日当日から引き渡しまでの手順と持ち物

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檜垣知宏:宅地建物取引士

この記事のポイント

  • 不動産決済は、関係者の集合・本人確認から始まり、融資実行、代金送金、所有権移転登記、諸費用支払い、鍵の引き渡しという6つのステップで進みます。

  • 売主と買主、それぞれの立場で必要な持ち物が異なるため、事前の入念な準備が不可欠です。

  • 決済を円滑に進めるためには、余裕を持った日程設定、諸費用の負担区分の確認等の事前準備と当日の注意点を押さえることが重要です。

不動産の売買契約における最終段階が、不動産決済です。
決済の流れは複雑に思えるかもしれませんが、当日の手順や引き渡しまでのプロセスを事前に理解しておくことで、安心して取引を進められます。

この記事では、不動産決済当日の具体的な流れ、売主・買主それぞれが必要な持ち物、そして決済をスムーズに完了させるための注意点について、初心者にもわかりやすく解説しますします。

目次

そもそも不動産決済とは?売買契約を完了させる最終手続き

不動産決済とは、不動産の売買契約を正式に完了させるための最終手続きを指します。
具体的には、売買契約書の内容に基づき、買主が売主に対して売買代金の残額を支払い、それと同時に売主が買主へ物件の所有権を移転させる一連の作業のことです。

この決済手続きをもって不動産取引は完了となり、物件の所有権が法的に買主のものとなります。
通常、この手続きには売主・買主のほか、不動産会社、司法書士、金融機関の担当者などが立ち会います。

不動産決済当日の流れを6ステップでわかりやすく解説

不動産決済日当日は、関係者が一堂に会し、複数の手続きを順番に進めていきます。
一般的に、決済は金融機関の営業時間内に行われ、全体の所要時間は1〜2時間程度です。

事前に全体の流れを把握しておくことで、当日の手続きを落ち着いて進めることができます。
ここでは、決済の開始から完了までの具体的な流れを6つのステップに分けて解説します。

ステップ1:関係者が集合し本人確認と書類のチェック

決済当日は、指定された金融機関などに売主、買主、不動産会社の担当者、司法書士といった関係者が集合します。

まず初めに行われるのが、当事者の本人確認です。
運転免許証やマイナンバーカードなどの身分証明書を提示し、売主と買主本人であることを確認します。

その後、決済時の手続きの中心となる司法書士が、所有権移転登記に必要な書類一式に不備がないかを最終チェックします。
登記済権利証や印鑑証明書、住民票など、重要な書類が揃っているかを確認する大切な工程です。

ステップ2:買主が住宅ローンを実行し融資を受ける

書類の確認が完了すると、次に買主が住宅ローンの融資実行手続きに移ります。

この手続きは、決済場所となっている銀行の窓口で行うのが一般的です。
買主は、融資実行の申込書に署名・捺印をします。
この手続きが完了すると、金融機関から住宅ローンで借り入れるお金が買主名義の預金口座に振り込まれます。

この融資金が、売主へ支払う売買代金の残金や諸費用の支払いに充てられます。
通常、この着金までには15分から30分程度の時間がかかります。

ステップ3:売主へ残代金や固定資産税などの清算金を送金する

買主の口座への着金が確認できたら、その口座から売主の指定口座へ売買代金の残額を一括で送金します。
この送金手続きも、金融機関の窓口やATM、オンラインバンキングを利用して行われます。

売買代金の他に、固定資産税や都市計画税、マンションの場合は管理費や修繕積立金といった費用も、引き渡し日を基準に日割り計算して清算します。

これらのお金の送金が完了し、売主側で着金が確認できた時点で、代金の授受が完了となります。

ステップ4:所有権移転登記を司法書士に依頼する

売主が代金の着金を確認したタイミングで、司法書士が所有権移転登記の申請手続きを開始します。
売主と買主から登記手続きに関する委任状を受け取り、必要書類一式を預かった司法書士は、速やかに管轄の法務局へ向かい登記申請を行います。

この手続きにより、対象不動産(土地・建物)の所有権が売主から買主へ法的に移転します。
買主が住宅ローンを利用する場合は、金融機関の抵当権設定登記も同時に申請されます。
登記が完了するまでには1〜2週間ほどかかります。

ステップ5:仲介手数料や司法書士への報酬を支払う

所有権移転登記の申請準備と並行して、関係各所への諸費用の支払いが行われます。
売主・買主は、それぞれ取引を仲介した不動産会社へ仲介手数料の残額を支払います。

また、一連の登記手続きを代行した司法書士に対して、登記費用(登録免許税など)と報酬を支払います。
これらの支払いは、事前に用意した現金で行うか、着金した売買代金から振り込むケースが一般的です。事前に請求書を受け取り、金額と支払い方法を確認しておくとスムーズです。

ステップ6:鍵や関係書類を買主へ引き渡す

すべての支払いが完了し、司法書士が登記申請へ向かった後、最終ステップとして物件の引き渡しが行われます。
売主は、購入された物件の鍵(スペアキーを含むすべて)を買主へ手渡します。

鍵のほか、建築確認済証や検査済証、設計図書、付帯設備の取扱説明書や保証書といった、物件に関する重要な書類一式もこの場で買主へ引き渡されます。

買主はこれらの書類をすべて受け取り、内容を確認します。
この引き渡しをもって、すべての決済手続きが完了となります。

不動産決済の当日に必要な持ち物リスト【売主・買主別】

不動産決済を滞りなく進めるためには、事前の持ち物準備が非常に重要です。
忘れ物をしてしまうと、決済が中断したり、最悪の場合は延期になったりする可能性もあります。

売主と買主では、用意すべき書類や物品が異なります。
ここでは、それぞれの立場で必要となる持ち物をリストアップして解説します。
不動産会社の担当者と事前にしっかり確認し、万全の状態で当日に臨むことが大切です。

【売主編】決済日に用意する書類と持ち物

売主が決済当日に用意する主な持ち物は、登記済権利証(または登記識別情報通知)、実印、発行から3ヶ月以内の印鑑証明書、本人確認書類(運転免許証やパスポートなど顔写真付きのもの)です。
これらは所有権移転登記に不可欠なものです。

加えて、固定資産評価証明書、物件の鍵一式、建築確認済証や管理規約などの関係書類も必要です。
また、仲介手数料や司法書士への報酬などを支払うための費用(現金または通帳・キャッシュカード)、そして売買代金の入金を確認するための通帳も忘れないように準備します。

【買主編】決済日に用意する書類と持ち物

買主が決済当日に用意する主な持ち物は、住民票(家族全員分)、実印、発行から3ヶ月以内の印鑑証明書、本人確認書類(運転免許証など)です。

住宅ローンを利用する場合は、融資を受ける金融機関の通帳、キャッシュカード、銀行届出印も必要となります。
また、売買代金の残金や諸費用(仲介手数料、登記費用、火災保険料など)を支払うための自己資金も準備しなければなりません。
金融機関によっては健康保険証や源泉徴収票の原本を求められる場合もあるため、事前に必ず確認しておきましょう。

不動産決済はどこで行う?場所と時間帯の目安

初めて不動産決済に臨む方にとって、どこで、どのくらいの時間をかけて手続きが行われるのかは気になるポイントです。
決済の場所や時間帯は、取引の形態、特に買主が住宅ローンを利用するかどうかによって大きく左右されます。

事前に一般的なケースを把握しておくことで、当日のスケジュール調整や心づもりがしやすくなります。
ここでは、決済が行われる場所と時間帯の目安について解説します。

決済場所は買主が利用する金融機関の支店が一般的

不動産決済が行われる場所として一般的なのは、買主が住宅ローンを利用する金融機関の支店です。
これは、住宅ローンの融資実行と売主への代金送金をスムーズに行うためです。
金融機関の応接室や個室を利用し、関係者全員が着席できる環境で手続きが進められます。

買主が現金で不動産を購入する場合など、住宅ローンを利用しないケースでは、売主側の取引銀行や、不動産会社の事務所で行われることもあります。
決済場所は不動産会社の担当者が関係者と調整の上で決定し、事前に連絡されます。

決済にかかる時間は平日の午前中に1〜2時間程度

決済手続き全体にかかる時間は、1時間から2時間が目安です。
当日は、本人確認、書類の署名捺印、融資実行、送金手続き、司法書士による登記内容の確認など、多くの工程が存在します。

また、決済は金融機関や法務局が業務を行っている平日の日中に行う必要があります。
司法書士が当日中に法務局で登記申請を完了させる必要があるため、手続きの開始時間は平日の午前中(午前9時や10時)に設定されることがほとんどです。
そのため、当日は時間に余裕を持ってスケジュールを確保しておくことが重要です。

不動産決済をスムーズに進めるための事前準備

不動産決済は当日の手続きだけでなく、そこに至るまでの事前準備が成功の鍵を握ります。
売主と買主、それぞれの立場で決済日までに完了させておくべき重要なタスクがあります。

これらの準備を怠ると、決済が予定通りに進まず、取引自体に影響を及ぼす可能性も否定できません。
ここでは、売主・買主それぞれが行うべき主要な事前準備について解説します。

【売主】抵当権抹消の準備を進めておく

売却する物件に住宅ローンが残っている場合、売主は決済日までに抵当権を抹消するための準備を進める必要があります。

抵当権とは、金融機関が融資の担保として不動産に設定する権利のことです。
物件を売却するには、この抵当権を抹消しなければなりません。

具体的には、ローンを借り入れている金融機関に連絡を取り、残債を一括返済する旨を伝え、抵当権抹消に必要な書類の発行を依頼します。

決済日当日に買主から受け取る売買代金でローンを完済し、司法書士が所有権移転と同時に抵当権抹消の登記申請を行うのが一般的な流れです。

【売主】引越しを決済日までに完了させる

売主は、原則として決済・引き渡し日までに引越しを済ませ、物件を空の状態にしておく必要があります。

売買契約書には「空家渡し」と明記されることが多く、決済日には買主がすぐに利用できる状態で引き渡すのが通常です。
家具や私物が残っていると、契約違反とみなされる可能性があります。

引越し業者の手配や、電気・ガス・水道といったライフラインの解約・精算手続きも計画的に進めなければなりません。
もし特別な事情で決済日以降の居住が必要な場合は、事前に買主の合意を得て「引き渡し猶予」の特約などを結ぶ必要があります。

【買主】住宅ローンの本審査を通過させておく

買主にとって最も重要な事前準備が、住宅ローンの本審査を通過し、金融機関と金銭消費貸借契約(金消契約)を締結しておくことです。

売買契約を結んだ後、速やかに金融機関に住宅ローンの本審査を申し込みます。
この審査に通過しなければ、決済日に融資を受けることができず、売買代金を支払えません。
本審査の承認が下りたら、決済日の1〜2週間ほど前に金融機関と金消契約を結びます。

この契約によって、具体的な借入額や金利、返済期間などが正式に決定され、決済日に融資が実行される段取りが整います。

不動産決済当日に慌てないための注意点

不動産決済は、高額な金銭と重要な権利が動く、不動産取引のクライマックスです。
当日に予期せぬトラブルで慌てることがないよう、事前に注意点を押さえておくことが大切です。

書類の不備や認識の齟齬など、些細なことが原因で手続きが滞ってしまうケースも少なくありません。
ここでは、決済当日をスムーズに迎えるために、特に心に留めておきたい注意点を3つに絞って解説します。

決済日の日程は余裕をもって設定する

決済日は、売主・買主だけでなく、不動産会社、司法書士、金融機関の担当者など、多くの関係者のスケジュールを調整して決定します。

金融機関や法務局の営業日である平日に設定する必要があるため、選択肢は限られます。
特に、月末や年度末、大型連休前は金融機関が混雑しがちで、手続きに通常より時間がかかる可能性があるため避けた方が無難です。

また、書類の準備などに不測の事態が起こることも想定し、売買契約から決済日までの期間をタイトに設定しすぎず、余裕を持った日程を組むことが重要です。

必要書類に不備がないか事前にダブルチェックする

決済の成否は、必要書類が完璧に揃っているかにかかっていると言っても過言ではありません。

印鑑証明書や住民票などは、発行後3ヶ月以内といった有効期限が定められています。
期限切れの書類は受理されないため、取得のタイミングには注意が必要です。
また、登記済権利証(登記識別情報)や実印といった再発行が難しい、あるいは不可能なものもあります。

不動産会社から提示される持ち物リストをもとに、前日までにすべての書類が揃っているか、有効期限は問題ないかなどを必ず自身で確認し、さらに担当者にもチェックしてもらうダブルチェック体制を推奨します。

振込手数料などの諸費用を誰が負担するか確認しておく

決済時には、売買代金の送金に伴う振込手数料が発生します。
金額によっては数万円になることもあり、この費用を売主と買主のどちらが負担するのかを事前に明確にしておく必要があります。

一般的には、代金を振り込む側である買主が負担するケースが多いですが、これは法律で決まっているわけではありません。
売買契約書に記載があるか、または事前に不動産会社の担当者を通じて双方で合意しておくことがトラブル回避につながります。

振込手数料の他にも、固定資産税の清算方法など、費用負担に関する項目は事前にすべて確認しておきましょう。

まとめ

不動産決済は、売買契約を完結させるための最終手続きであり、当日は多くの工程を順序立てて進めます。

決済の流れは、関係者の集合と本人確認から始まり、融資実行、代金送金、所有権移転登記、諸費用の支払い、そして鍵の引き渡しをもって完了します。
このプロセスを円滑に進めるためには、売主・買主それぞれが必要な書類を事前に漏れなく準備することが不可欠です。

また、抵当権抹消の準備や引越し、住宅ローン契約といった決済日までのタスクを計画的にこなし、余裕を持った日程設定や書類のダブルチェックなど、注意点を押さえておくことで、安心して取引を終えることができます。

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檜垣知宏:宅地建物取引士

株式会社ライフアドバンス代表取締役の檜垣知宏です。 2014年8月に設立し、恵比寿不動産という屋号で賃貸仲介・売買仲介・賃貸管理を行う不動産業者です。 不動産業界歴15年の経験を生かし、 運営しているサービスサイトである「不動産の相談窓口」の運営者も務めております。

保有資格:宅地建物取引士