不動産の売買を控えて、売買契約書の締結を予定している方も多いでしょう。しかし不動産売買契約書には多くの記載事項があり、正しく契約できるか不安を感じている方も少なくありません。
不動産売買契約書には、あらゆる事態を想定して、できるだけ細かく取り決めを記載する必要があります。今回の記事では不動産売買契約書の作成方法や、注意すべき点を紹介します。

不動産売買契約書とはどんな書類?

不動産売買契約書は、名前の通り不動産を売買する際に作成する書類です。不動産の売買の経験がある方であれば署名・捺印した経験があるでしょう。不動産の売買の経験がない方でも、一度は耳にしたことがあるという方も多いでしょう。
不動産を売買する際に作る契約書ですが、不動産売買契約書とはどのような書類でしょうか。ここでは不動産売買契約書について、詳しく紹介していきます。
なんのために作成する?
不動産売買契約書は、買主と売主の双方に契約内容に相違がないかを確認し、記録を残すことを目的として作成します。民法では、売買契約は口約束でも成立するとされています。しかし不動産のような高額、かつ物件ごとの特性が強い商品では、口約束ではトラブルになりかねません。
不動産は高額な資産であるため、一度トラブルが発生してしまうと代償も大きく、解決までに時間を要します。そのためトラブルを未然に防ぐためには、売買に関する合意事項を書面に残し、保管することが必要です。金額や物件所在地、物件に関する事項などを売買契約書に記載し、買主と売主が実印で捺印することで、売買に関する合意事項を記録として残せます。
このように不動産売買においては、契約書の作成が欠かせません。そのため民法で定めるルールとは別に、宅地建物取引業法では契約の内容を示した書面(37条書面)の作成を義務付けています。
重要事項説明書との違いは?
不動産の売買を行う際の書類には、売買契約書のほかに重要事項説明書があります。重要事項説明書とは名前の通り物件に関する重要な事項を、宅建士の資格を持つ人が説明して作成する書類です。重要事項説明書には接道状況や道路の種類、建物の広さや築年数、用途地域や水道や電気などのライフラインに関することが記載されています。
このように重要事項説明書は売買契約書とは別物で、物件に関する重要な事項を示しているにすぎません。そのため法的拘束力はなく、重要事項の内容に納得がいかず契約をやめて、売買契約を結んでいなければ問題ありません。一方で売買契約書には、物件に関する重要な事項などは記載されず、売買に関する取り決めが記載されます。
売買代金や代金の支払い期日、契約解除に関する内容などを記載し、売主・買主双方が売買金額に応じた印紙を貼り付けします。重要事項説明書と違って「契約書」であるため、法的拘束力が発生します。
不動産売買契約書に記載の内容

不動産売買契約書は、後々のトラブルを防ぐためにさまざまな内容を記載します。具体的には、次のような記載事項があります。
1.売買の当事者
2.物件やマンションの所在地、面積などの詳細情報、持分の記載
3.売買代金と支払い条件、土地と建物代金の内訳
4.引き渡しと所有権移転の時期
5.契約解除と違約金の条件
6.契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任、民法改正により名称変更)や免責に関する内容
7.公租公課の精算
8.手付金に関する取り決め
9.ローン特約(住宅ローン利用時)
10.付帯設備の状況と確認事項
11.物件の現況と引き渡し時の状態、危険負担
12.土地の測量・境界の明示について
13.反社会的勢力の排除条項
14.物件に関する特約事項
売買契約書は、仲介する不動産会社が作成することが一般的です。ただし個人間の売買では、自分で作成しなければならない場合もあります。自分で作成しなければならない場合は、雛形を参考にしましょう。インターネットなどでは無料のテンプレートやサンプルが、エクセルやword・pdfでダウンロードできます。ひな形の文言などを見本に、記入例や記載例などの書き方をもとに修正していくと作りやすいでしょう。
不動産売買契約書には収入印紙を貼り付け、売主・買主が消印を押印します。売買金額が10万円以下であれば200円、というように売買金額によって収入印紙の額が決まります。貼り方は売買契約書の左上あたりに貼ることが一般的です。また収入印紙の金額は軽減税率が適用されており、令和9年まで印紙税は軽減されています。
印紙税を売主と買主、どちらが負担するかについては、明確な規定はありません。不動産売買契約書を2通作成する場合は、双方が負担することが多いです。中古の物件であれば土地建物ともに売買契約書で完結しますが、新築の場合は別途工事請負契約書を締結します。また契約のあとに内容を変更する場合は、変更契約書や覚書を作成することもあるでしょう。
どの書類にも、日付を記載し売主・買主が記名押印します。契約に使用するハンコは認印ではなく実印とする場合が多いですが、最近では電子契約も普及しているため印鑑が不要なこともあります。記載内容に軽微な変更が生じた場合の変更方法は、訂正印や捨印で対応可能ですが、重要な項目の場合は作成しなおしたほうが良いでしょう。
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不動産売買契約書で特に確認するべきポイント

不動産売買契約書には、さまざまな項目が記載されます。そのため確認すべき事項は多くありますが、その中でも特に気を付けたい注意点は下記の通りです。
①売買物件の記載は正しいか
②手付金、売買代金の金額
③代金の支払い時期や支払い方法
④引き渡しの時期
⑤ローン特約
⑥公租公課の分担方法と金額
⑦違約金の金額
それぞれの内容について、詳しく見ていきましょう。
①売買物件の記載は正しいか
不動産売買契約書には、売買が行われる土地や建物の所在地が記載されます。土地のみを売買する土地売買契約書であれば、売買対象の所在・地番・地目・地積を記載します。建物も含めて売買するのであれば土地のみの売買と違い、建物の所在・家屋番号・修理・構造・床面積を記載しなければなりません。
一般的に売買契約書に記載される所在地は、地番表示です。地番表示とは土地の一筆に対してつけられた番号のことで、登記簿謄本や権利証などで確認できます。普段何気なく使用している住所は住居表示と呼ばれ、土地を表す地番と違って「建物」の場所を表しています。地番表示は筆ごとの番号なため、1つの土地の売買でも複数の地番があることも珍しくありません。
もともとは不動産の所在を表す際には地番表示を使っていましたが、分筆・合筆によって地番が変わることも多く混乱するケースもありました。そこでわかりやすくするために導入されたのが住居表記で、現在でも地域によっては地番表記と住居表示が同じこともあります。不動産契約書を確認する際は、地番表記で売買対象の物件が正しく記載されているかを確認しましょう。
②手付金、売買代金の金額
手付金や売買代金の金額が正しく記載されているかも、大事なチェックポイントです。手付金とは売買契約の締結にあたって、買主から売主に対して売買代金の一部を支払うことをいいます。手付の金額に決められたルールはなく、売買代金の5~10%程度が一般的な金額です。手付金を受け取った売主は、印紙を貼り付けた領収書を買主へと交付します。
手付金は特段の定めがない限り、解約手付として取り扱われます。売買契約を締結した後に買主側から解除する場合は支払った手付金を放棄し、売主から解除する場合は受け取った手付金の倍額を払うことで解除が可能です。しかし相手方が売買に向けた履行の着手を行った場合は、解除できません。
不動産契約における履行の着手とは、契約で定めた義務の履行を実際に行うことをいいます。不動産売買契約書では手付以外の残代金の支払いなどが定められているため、買主が残代金の支払いなどを行った場合は「履行の着手」を行ったことになり、解除できません。
売主側から見た履行の着手には、次のようなものがあります。
・物件の引渡しの準備(鍵の移転、登記のための書類作成など)
・代金の支払いの準備(融資の申請や手続など)
・物件の明け渡しの準備(クリーニング、不要品の搬出など)
売主は上記のような売却に向けた準備を、契約締結後に遅滞なく行わなければなりません。万が一、売主が履行の着手を遅延したり、履行できなかったりした場合は買主から契約の解除や、損害賠償請求されてしまう可能性もあるでしょう。
③代金の支払い時期や支払い方法
不動産売買契約書には売買代金の総額や手付だけでなく、代金の支払い時期や支払い方法も記載します。例えば、「買主は、売主に売買代金を標記の期日までに現金(振込送金を含む)又は預金小切手で支払う。」のように具体的な期日と、支払い方法を記載します。不動産の売買では金額も大きく、トラブルも多いことから「うっかり忘れていた」では済まされません。
万が一支払いが遅延した場合、売主は買主に対して債務不履行で契約を解除し、違約金の請求が可能です。契約を解除しない場合は未払い代金とその金額に年利3%、(宅建業者が当事者の一方もしくは双方の場合は6%、消費者契約法では年利14.6%)の損害金を請求できます。しかしこの場合は売主は買主に対して、物件を引き渡さなければいけません。
また買主は支払期日より前に代金を支払うことも可能です。ただし早めに支払ったからといって、売買契約書に記載された期日よりも早めに引き渡しをしないといけなくなるわけではありません。買主は代金は支払期日までに払えばよいとされており、期日より先に払うかどうかは買主の事由であるためです。
一般的に不動産代金の支払いは現金、もしくは預金小切手に限定されています。実際には現金で準備をするのでなく、買主から売主の口座へ振り込みをする場合が殆どです。この際の振込手数料は、買主が負担します。預金小切手は「預手(よて)」と呼ばれる小切手で、支払銀行が振出人になっている小切手のことを言います。銀行が振出人となっているため、不渡りなどの心配がない安全な小切手でありますが、売主が現金化するには手形交換所による決済が必要になるため時間がかかります。
④引き渡しの時期
不動産売買契約書には、引き渡しの時期も記載します。一般的に不動産の引き渡しまでの流れは、次のようになります。
1.売買契約書を作成
2.引き渡しの準備
3.残代金の決済・引き渡し
不動産の売買では売買契約締結日に引き渡しを行うことは珍しく、契約日から1~2か月後に引き渡しを行います。契約日から引渡し日までの間に、売主・買主双方が引渡しへ向けて準備を行います。買主が住宅ローンを利用するのであれば、ローンの申し込みをしておかなければなりません。
新築マンションなどの区分所有建物の場合は完成前に売り出すことも多いため、引き渡しまでに1年以上もの期間があることもあります。そのため一度のローンの審査を通していても、転職などの理由で引き渡し前に審査が通らなくなることもあるので注意しましょう。また引渡しまでの間に、手付解除や内容に変更がある場合は仲介業者に相談するようにしましょう。
実際の引き渡しがどこで行われるかは、売買によって違います。個人間の売買であれば買主がローンを利用することも多いため、銀行の応接室などで行うことが多いです。買主が法人などの企業で借入を利用しない場合は、不動産会社で行うこともあります。
引渡しには、売主と買主、仲介業者、司法書士が一度に集まることが多いでしょう。司法書士は不動産の所有権を移転するための書類を作成し、法務局へと提出します。この際に発生する司法書士への費用は、買主が負担します。
司法書士が売主と買主の必要書類を確認し問題がなければ融資を実行し、買主は売主へと代金を振り込みます。売主は口座に代金が入金されたことを確認して、鍵の引き渡しなどを行い引渡しは終了です。
⑤ローン特約
不動産売買契約書では、ローン特約についても記載します。ローン特約とは、買主がローンを利用する際に、ローンの審査が通らずお金を借りれなかった場合は売買契約をキャンセルできるという特約です。ローン特約を使って契約をキャンセルした場合、契約そのものがなかったことになるため支払っていた手付金や仲介手数料などは返金されます。売主側からすれば買主のローンの審査次第では契約を解除されてしまう可能性があるため、ローン特約は無いほうが安心できるでしょう。
ローン特約が適用されるのは金融機関から借入ができなかった場合のほか、予定していた金額で借りられなかった場合があります。しかし買主側が積極的に融資の審査に通過するための努力をしていなかったり、虚偽の申告をしていたりする場合はローン特約の適用は認められません。ローン特約では解除期日に関する取り決めを行います。
解除期日を過ぎてしまうと、借入が出来なかった場合でも契約の解除ができません。もし審査に時間がかかってしまった場合は、期日の延長は可能です。口約束だけではトラブルになってしまうため期日を延長する際は、変更の覚書や念書などを交わすようにしましょう。
⑥公租公課の分担方法と金額
不動産売買契約書には、公租公課(読み方:こうそこうか)の分担方法と金額も記載します。公租公課とは、「公租」が税金を指し「公課」が健康保険料や社会保険料を指します。不動産売買における公租公課は、固定資産税・都市計画税を指します。不動産売買では不動産取得税なども発生しますが、不動産取得税は買主にのみかかる税金のため分担しません。
固定資産税・都市計画税は1月1日時点の所有者に対して、1年分の税額が課税されます。そのため不動産の売買では1月1日を起算日にして、日割り計算で清算します。1月1日から引渡し日までを売主が負担し、残りの税額を買主が負担するというケースが多いでしょう。
⑦違約金の金額
不動産売買契約書には、違約金の金額に関する条項も記載されます。仮に手付解約期間をすぎてから解約せざるをえなくなってしまったとき、違約金をいくらにするかを定めておく必要があるためです。違約金の相場は、売買代金の10~20%に設定されることが多いです。
宅建業法では売主が宅建業者の場合、違約金の上限は20%までと定められています。個人間の売買であっても、この数値にならって設定されることが多いです。しかし契約の解除をしたからと言って、全ての違約に違約金が発生するわけではありません。
クーリングオフの期間内の解除であれば、違約金は発生しません。クーリングオフとは買主が契約を解除する権利を有する期間のことで、期間内の解除であれば違約金は無料で契約を無効にできます。注意事項としてはクーリングオフは任意の制度である点です。契約書の特約事項などに明確に記載をされていなければ、法的効力はありません。

不動産売買契約書を作成時の注意するポイント

不動産売買契約書を作成する際に注意するポイントを紹介します。
・必ず内容をすべて理解する
・あらゆる事態に備えて細かく記載する
それぞれの内容を見ていきましょう。
必ず内容を全て理解する
不動産売買契約書に記載されている内容は、必ずすべて理解するようにしましょう。不動産売買契約書は物件を販売する不動産会社の宅地建物取引士が作成することが多いですが、必ずしも完璧であるとは限りません。内容を理解しないまま契約をしてしまい、後で大きなトラブルに発展してしまうケースは少なくありません。
契約する前に契約書の雛形やコピーをもらっておき、事前に確認しておきましょう。不明な点があるのであれば法律に詳しい専門家などに、アドバイスを貰うようにしましょう。費用はかかってしまいますが、専門家にリーガルチェックをしてもらったり、契約書の作成代行を依頼したりすることも可能です。
また作成した売買契約書はしっかりと保管しておきましょう。定められた保管期間などはありませんが、個人の確定申告や相続の手続きでも写しが必要になります。後々のトラブルにも役立つため、紛失しないように気を付けましょう。
あらゆる事態に備えて細かく記載する
不動産売買の記載内容は、あらゆる事態に備えてできるだけ細かく記載することも重要です。不動産のトラブルでは想定していないトラブルが起こってしまうこともあります。そのためそれぞれの記載について、できるだけ細かく決めておく必要があります。
不安な場合は費用をかけてでも、弁護士などにチェックしてもらうようにしましょう。記載する文言の案については、インターネットなどでも幅広く情報収集が可能です。不動産会社に言われるがままに契約するのではなく、自分でも各種要件を確認しながら契約するようにしましょう。
不動産売買契約書のよくある質問

不動産売買契約に関して、よくある質問を紹介します。
・売主と買主どちらが作成するもの?
・不動産売買契約書はどこでもらえるの?
・印紙税の支払いはどうしたらいい?
それぞれの回答を紹介していきます。
売主と買主どちらが作成するもの?
不動産売買契約書は2通作成し、売主と買主が1通ずつ保管するケースが多いです。しかし印紙代の節約などの観点から1通のみを作成し、どちらかは写しを保管するケースもあります。また契約書自体は前述の通り不動産仲介会社が作成するケースが多いですが、仲介会社が入らない場合などは個人で作成することもあります。
不動産の売買契約では売買契約書のほかにたくさんの書類が発生します。枚数の多い書類などは、製本される場合もあります。不動産売買契約書など複数の書類を、不動産会社がファイルにまとめて渡してくれます。
不動産売買契約書はどこでもらえるの?
不動産売買契約書の入手方法は、インターネットなどで無料でひな形がダウンロードできます。ワードやエクセル形式で入手できるため、作り方は難しくありません。印刷する場合は、A3サイズで両面印刷します。しかし大きな金額を売買する重要な契約書なので、作成方法が不安な場合は専門家に相談するようにしましょう。
印紙税の支払いはどうしたらいい?
印紙税の支払いは、不動産売買契約書に貼り付けして納付します。印紙税を貼り付けした場合は、印紙の彩紋をけさなければなりません。印紙に印鑑を押すことをよく割印といいますが、正しくは消印です。国税庁の定めでは消印をするのは文書の作成者だけでなく、また署名でもよいとされています。
押印する位置は、文書と収入印紙にまたがっている箇所に押印しましょう。また印紙税のほかに、建物の売買には消費税が課税されることがあります。インボイス制度の開始により、不動産売買契約書にも登録番号などの記載が必要になるケースもあるため、注意しましょう。
不動産売買契約書のまとめ
不動産売買契約書は、不動産売買契約を締結する際に作成する重要な書類です。不動産は大きな金額の取引になるため、トラブルに発展してしまうケースが少なくありません。そのため不動産売買契約書は、あらゆる事態を想定して、できるだけ細かく条項を記載しなければなりません。一般的に不動産売買契約書は、仲介する不動産会社が作成します。
しかし不動産会社が作成した売買契約書が、いつも正しいとは限りません。不動産会社任せにするのではなく、事前に契約書を確認してすべての項目をチェックするようにしましょう。事前に確認を徹底しておくことで、後々のトラブル防止に繋がります。
