自宅の売却に伴い、居住用財産の3,000万円特別控除の利用を検討している方も多いでしょう。しかし3,000万円特別控除の特例を適用するには、どのようにすればよいかわからない方も多いでしょう。
3,000万円の特別控除を適用するためには、適用要件を満たしたうえで申請しなければなりません。今回の記事では特例の適用要件や申請方法、併用できない特例などについて詳しく紹介していきます。

3000万円の特別控除とは?

居住用財産の3000万円の特別控除とは、マイホームを売却した際の譲渡税を節税できる特例です。自宅などのマイホームに限らず不動産を売却(=譲渡)して、利益が出た場合は利益に対して譲渡所得税がかかります。譲渡所得は、下記の計算式で算出します。
【譲渡所得】
不動産の売却価格-不動産の購入価格-不動産売却にかかった費用=譲渡所得
実際の税額は上記で算出した所得に、税率を乗じて算出します。税率は売却した不動産の保有期間によって、短期譲渡所得と長期譲渡所得にわけられます。
・短期譲渡所得(所有期間が5年以下)39%(所得税30%、住民税9%)
・長期譲渡所得(所有期間が5年超)20%(所得税15%、住民税5%)
※復興所得税(所得税×2.1%)を含まず
不動産の売却は価格も大きいため、税額も高額になってしまうことも多いです。とくに相続などで実家や土地を引き継いだ場合は、取得費が低いため高額の税金を払うことを気にして中々売却に踏み切れない場合も多いでしょう。このように不動産の売却においては、税金への配慮が欠かせません。
家族構成の変化や、引っ越しなどにともなってマイホームを売却する際にも、税金はかかります。しかし税金を気にして売却をためらう方が増えてしまうと、不動産の円滑な取引ができません。そこで作られたのがこの特例で、名前の通り自宅を売却した場合の所得を、3,000万円控除できます。
この特例を適用すれば、所得が3,000万円までなら税金がかからないなど、大きな節税が可能です。しかし特例を適用するためには、要件を満たす必要があります。3,000万円特別控除を満たす要件や、適用除外となる要件を見ていきましょう。
3,000万円特別控除を受けるための要件
3,000万円の特別控除を受けるための要件は、次の通りです。
・所有者が居住している家屋(土地、借地権を同時に売った場合も含む)を売却した場合であること
・所有者が居住しなくなった日以後3年を経過する日の12月31日までに家屋(土地、借地権を同時に売った場合も含む)を売った場合
・買主が売主の配偶者、直系血族等の特殊関係者でないこと
・3,000万控除を受ける不動産につき他の一定の特例制度の適用を受けていない
まず理解しておいて頂きたいのは、この特例は居住している家を売る際に利用できるという点です。
そのため土地のみや借地権だけを売却した場合や、建物を取り壊した場合はこの特例の対象にはなりません。
一方居住用であればマンションはもちろん、店舗併用住宅であっても自宅部分の床面積に相当する金額は対象になります。
また売却する期間にも制約があります。
この特例を適用するためには、住まなくなってから3年を経過する日の12月31日までの譲渡に限られ、10年も前に売却したものは対象になりません。
さらに、売却した相手が夫婦や親族などの場合は適用要件を満たさない点にも注意しましょう。
さらにこの特例は、一部のほかの特例とは利用できません。3,000万円控除の特例を受ける前年または前々年に、下記の特例を利用している場合は併用できないため注意しましょう。
・居住用財産の3,000万控控除
・居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除
・特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除
また3,000万円の特別控除の特例は、住宅ローン控除との併用にも一定の制限があります。
併用できない特例については、後ほど詳しく解説しています。合わせて参考にしてください。
3,000万円特別控除の適用除外要件
適用要件を満たす場合でも、次のような場合は適用除外となるので注意しましょう。
・3,000万円控除の適用を目的に入居したと認められた家屋の売却は適用除外
・別荘などの娯楽・保養用住居の売却は適用除外
・一時的な居住を目的とした物件の売却は適用除外(新築のつなぎの仮住まいなど)
この特例はマイホームを売却しやすくするための特例なので、「マイホームとして住んだ家の売却であること」が前提です。そのため別荘や保養用の建物などは、受けられないです。この特例を利用するために住民票だけを移すなど、実際に居住していない場合も利用できません。
一度に複数の物件に適用することもできませんし、賃貸に出している物件にも適用できません。一方で空き家であっても住まなくなって3年以内や、解体してから1年以内であれば適用になります。
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3,000万円特別控除の申請方法

ここからは、3,000万円特別控除を申請する方法を紹介します。申請に必要な書類や手続きや書類、いつまでに申請すればよいかなどについて紹介していきます。
申請方法(申請期間)
この特例は不動産売却益に対する税金に関するものなため、適用するためには確定申告が必要です。確定申告とは、1年間の個人に関する所得を確定させて申告し、税金を納付する一連の手続きです。会社員の方にとってはあまり馴染みのない手続きではありますが、ふるさと納税や住宅ローン控除で経験のある方も少なくないでしょう。
確定申告の期限は所得が発生した年の、翌年の2月17日から3月17日の間(令和6年の場合、土日祝日の関係で前後することもあり)です。この期間内に必要書類を揃えて、税務署へ申告することで申請できます。
確定申告といえば税務署に書類を持ち込むイメージが強いかもしれませんが、申告方法には次の4つがあります。
・税務署への持ち込み
・税務署または業務センターへの郵送
・税務署の時間外収受箱への投函
・e-Taxによる電子申告
便利でおすすめなのがe-Taxで、税額が自動で計算され3,000万円特別控除の申請も指示通りに進められます。しかしe-Taxで完結するためにはある程度の知識とインターネット環境が必要なため、窓口で相談したい場合は税務署へ行くとよいでしょう。
ただし窓口に持参する際の注意点としては、混雑する点です。とくに確定申告の期限間近になるほど、混雑はひどくなるので注意しましょう。窓口で並ぶのが嫌な場合は、税務署の時間外収受箱への投函や郵送する方法もあります。
確定申告の期限を過ぎてしまうと、特例が利用できなくなる場合もあります。また延滞税などが課せられてしまう場合もあるため、期限内に申告するようにしましょう。
必要書類
3,000万円特別控除を申請する際に、必要な書類は下記の通りです。
・確定申告書・譲渡所得の内訳書
・戸籍の附票
・譲渡した土地・建物の全部事項証明書
・売却時の書類の写し
・取得時の書類の写し
・住民票の写しあるいはマイナンバー
上記のように申請するには、複数の書類を準備する必要があります。必要な書類はケースによって違う場合もありますが、3,000万円特別控除では実際に居住していたことと、売却した日時を確認する必要があります。居住と売却の事実を証明するための資料が必要と考えると、わかりやすいでしょう。
国税庁のHPでは、利用する特例ごとに応じた必要書類とチェックリストを作成しています。必要書類を確認する際には、活用するとよいでしょう。
参考:税務署 特例の適用を受ける場合に申告書に添付する書類

3,000万円特別控除を利用する際の注意点

先ほども少し紹介しましたが、3,000万円の特別控除は併用できない制度があります。ここでは注意点として、併用できない特例などについて詳しく紹介していきます。
併用できない特例や控除がある →住宅ローン控除・買換え特例・損失の損益通算等
3,000万円特別控除は、主に次の制度との併用ができません。
・住宅ローン控除
・買い替え特例
・譲渡損失の損益通算
住宅ローン控除とはマイホームを購入する際に、一定の条件を満たした住宅ローンを利用することで適用となる制度です。最長で入居した年から13年間(2024年度の場合)、毎年年末の住宅ローン残高に応じて所得税の控除が受けられます。3,000万円の特別控除のような所得控除などと違い、住宅ローン控除は税額控除のため減税額が大きく多くの方が利用しています。
住宅ローン控除と3,000万円特別控除が利用できれば、住み替えなどの際に大きな恩恵を受けられる可能性がありますが、残念ながらこの二つの制度は併用できません。住宅ローン控除の適用要件には、次のような記載があります。
・「その自宅に実際に住み始めた年とその前年、前々年に居住用3,000万円控除を受けている場合には適用できない」
・3「自宅に住み始めた年の翌年以後3年以内に従前の自宅を売却し、居住用3,000万円控除の受けている場合には住宅ローン控除を適用できない」
つまり自宅を購入して住宅ローンを利用した年の前2年と、3年後までは3,000万円特別控除が利用できません。住み替えなどで売却によって所得が出る場合には、どちらの制度を利用するのがよいかよくシミュレーションをするようにしましょう。
買換え特例とは正式には、「特定の居住用財産の買換えの特例」といいます。名前の通り一定の条件を満たす物件を買い替えた場合に利用できる制度で、譲渡益に対する税金を将来に繰り延べることが可能です。わかりやすくいうと本来売却したタイミングで払うべき税金を、買い替えで購入した物件を売却する時まで先延ばしにできる制度です。
税金を先伸ばしにするだけなので、税金自体を節税できるわけではないですが、税負担を軽減できます。こちらも3,000万円の特別控除とは併用できないため、どちらを選択すべきかは慎重に検討するようにしましょう。また買換え特例は、法人でも利用できるケースがある点も、認識しておきましょう。
買い替え特例を適用するための要件の1つに、物件の所有期間が10年を超えていること、があります。10年を超えて所有していた不動産を売却した場合は、軽減税率が適用される、という制度があります。3,000万円の特別控除は10年超所有の軽減税率との併用は可能であるため、どちらを選択するか検討する際には考慮に入れておく必要があります。10年超の軽減税率については、後ほど詳しく紹介します。
譲渡損失の損益通算の正式名称は、「居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除」といいます。一定の条件を満たす物件を売却した場合は発生した損失を、「損益通算」や「繰越控除」ができる制度です。
損益通算とは不動産の売却で出た損失を、ほかの所得と通算できる仕組みをいいます。給与収入や事業収入などほかの所得がある場合、所得から不動産の譲渡で発生した損失を通算することで、所得を抑え節税が可能です。ほかの所得と通算してもまだ損失が残る場合は、翌年以降の所得から繰り越して控除できます。
このように譲渡損失の損益通算と繰越控除は、不動産の譲渡によって損失が出た場合の特例です。そのため譲渡所得を控除する3,000万円の特別控除とは、併用できません。
ここまで説明したように、不動産の譲渡に関する特例はさまざまなものがあります。制度を利用するためには必要書類を準備して、確定申告が必要なものが多いです。そのため制度を利用するにあたって、どのような書類を準備すべきか迷ってしまう方も多いでしょう。
必要な書類を確認したい場合は、国税庁が作成しているチェックシートを活用するのがおすすめです。下記のように国税庁では制度ごとに適用要件に関するチェックシートを公表しているため、迷った場合は参考にしましょう。
参考:令和5年「資産課税関係チェックシート」
添付書類だけでなく、確定申告の書き方に関する無料相談も税務署では対応してくれます。土地売買や収用・建物の解体など不動産の税金に関することだけでなく、相続税や贈与税の計算方法などさまざまな内容に対応してくれます。税金に関して不安な場合は、活用するようにしましょう。
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3,000万円特別控除と併用できるもの

3,000万円特別控除には、併用できる特例もあります。先ほども少し紹介しましたが、3,000万円特別控除と併用できる「10年超所有軽減税率」について、詳しく紹介していきます。
10年超所有軽減税率の特例
10年超所有軽減税率の特例とは、10年以上所有していたマイホームを売却した際に利用できる特例です。不動産を売却した際の所得には税金がかかりますが、税率は所有期間によって短期譲渡・長期譲渡所得にわかれ、5年超保有していると下記の税率が適用されます。
・長期譲渡所得(所有期間が5年超)20%(所得税15%、住民税5%)
※復興所得税(所得税×2.1%)を含まず
しかし10年超保有していたマイホームの場合は、所得が6,000万円以下の部分については下記の軽減税率が適用されます。
・所得税10%、住民税4%
※復興所得税(所得税×2.1%)を含まず
(6,000万超の部分は、長期譲渡所得の税率が適用される)
10年超所有軽減税率の特例が適用されると、譲渡所得6,000万円以下の税率が大きく軽減され、6,000万円超の部分に対しては長期譲渡所得と同じ税率が適用される仕組みとなっています。
10年超所有軽減税率の特例の適用要件とは?
10年超所有軽減税率の特例を利用するための要件は、下記の通りです。
・譲渡した年の1月1日現在でマイホームの所有期間が10年以上あること
・親子や夫婦など特別な関係にある者への売却ではないこと
・住まなくなった日から3年後の12月31日までに売却すること
・家屋の解体日から1年以内に譲渡契約を締結し、かつ、空き家になって3年後の12月31日までに売却すること
・家屋を解体して更地にした場合、譲渡契約の締結日まで賃貸業などの用途に使っていないこと
・3,000万円の特別控除以外の特例を使っていないこと
・過去3年間に軽減税率の特例を使っていないこと
この特例は居住用財産を売却した場合の特例です。そのため相続で被相続人から引き継いだ物件であってもマイホームであれば利用できますし、配偶者が共有者となっていても適用できます。一方でセカンドハウスや賃貸併用で賃貸部分が大部分を占めるような場合は、適用できません。
まとめ
3,000万円特別控除は、マイホームを売却して所得が発生した場合に利用できる制度です。不動産の譲渡所得には税金が課せられますが、この特例を利用すれば節税が可能です。居住期間の年数に関する定めはなく、居住用財産であれば一定の要件を満たせば利用できます。
不動産の譲渡税は高額になってしまう場合も多いため、本特例を利用することで大幅な節税ができる可能性があります。転勤による単身赴任や、リースバックを活用した制度などで自宅を売却する方も少なくありません。不動産売却による税金が気になる方にとっては、活用すべき制度といえるでしょう。
