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転勤になったら家を貸す?売る?転勤が決まったらまずやるべきことを解説!

この記事の監修者

檜垣知宏:宅地建物取引士のアバター

檜垣知宏:宅地建物取引士

この記事のポイント

  • 転勤の期間によって対処方法が異なる?

  • 空き家、賃貸、売却。それぞれのメリットとデメリットを深堀りチェック!

  • 賃貸、売却時のとっておきのコツを教えちゃいます。

マイホームを所有している方にとって、会社から転勤の通達を受けると、現在住む自宅の行く末が大きな悩みの種になります。

そのまま空き家にしておくべきか、賃貸に出して収入源にするか、それとも売却するか。
選択肢は複数で、一長一短があります。
転勤が決まった際の自宅処分方法は、経済的な面だけでなく、生活設計にも大きく影響する重要な決定事項です。

そこで今回は、転勤が決まったらまずどのようなことに気を付ければよいのか、適切な対処法を詳しく解説していきます。
賢明な判断を下すための多角的なポイントをお伝えしますので、特にマイホーム購入世帯で転勤族の方は必見です。

この記事を読めば、間違いなく有効な対策が立てられることになるでしょう。

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目次

転勤が決まった時に家はどうすればいいの?

転勤が決まった際に、これまで住んでいた自宅をどうするかは、大きく分けると3つの選択肢があります。

  • そのまま空き家にしておく
  • 賃貸に出して家賃収入を得る
  • 売却する

どの選択肢を取るかは、転勤先での生活期間や、将来の居住計画、資金計画などを総合的に勘案する必要があります。
では、それぞれ詳しく解説していきます。

転勤期間が1年以内:そのまま空き家にしておく

転勤期間が1年以内と比較的短期である場合、そのまま空き家にしておくという選択肢が無難です。

短期間の賃貸物件は借り手が敬遠しがちなため、なかなか入居者が見つからない可能性が高く、
仮に入居者が決まったとしても、契約期間が短いため、家賃収入などによるオーナーのメリットは限られます。

一方で、賃貸に伴う様々な手続きや管理といった、手間とコストは避けられません。
さらに退去時の原状回復工事といった作業も含めると、短期間で賃貸を行うメリットは乏しいと言えるでしょう。

そのため、短期間の転勤であれば一時的に空き家とし、維持管理に気を付けながら現状のままで留め置く方が得策といえるのです。

空き家であっても、定期的な内部点検や防犯対策など、最低限の管理は行う必要がありますが、
1年以内の短期間であれば、それほど手間もかからないでしょう。

転勤期間が決まっている:賃貸に出す

転勤期間が1年を超え、かつ期間が決まっている(ある程度見通せる)場合、その期間中は自宅を賃貸に出すのが賢明な選択肢となります。
賃貸は家賃収入を得られることに加え、入居者による物件の維持管理が最低限なされるというメリットがあります。

その際、特におすすめなのが「定期借家契約」です。
定期借家契約とは、契約期間を決めた上で契約終了時に確実に物件が明け渡されることが約束された賃貸借契約のことです。

つまり、転勤期間に合わせた期間設定が可能であり、転勤終了後は待機期間なく自宅に戻れるというメリットがあります。
転勤の行き先や期間が明確な場合、この形式が最も安心できる契約方法と言えるでしょう。

定期借家契約では、期間中は通常の賃貸借同様、家賃は受け取れますし、入居者の選定や管理も不動産会社に任せれば行ってくれます。万が一のトラブル時も不動産会社が窓口になるため、オーナー側での対応負担は軽減されます。

転勤期間が決まっている場合、転勤中のみ家を貸す「定期借家契約」を採用することによって、
安定した賃貸収入を得つつ、転勤後もスムーズに自宅に戻り生活することが可能です。

転勤期間が決まっていない場合:売却する

転勤期間が全く決まっていない場合は、物件の売却も検討すべき選択肢の一つとなります。
期間が不明確なことによって将来の見通しが立てにくく、賃貸経営上の戦略にも制限がかかってしまうためです。

そうであればいっその事、物件を売却し一括で資金を得ることで、新生活の立ち上げ資金や、転勤先で新居を購入する際の資金源といった、有効活用が期待できます。
物件を管理の手間やコストも発生しなくなり、精神的な負担も軽減されるといったメリットもあります。

ただし、売却すれば当然その物件には将来的に住めなくなるというデメリットがあります。
今後の生活設計によっては、選択肢を狭める可能性もあるでしょう。

不動産売却を検討する際は、転勤先での生活期間や、将来的な居住計画を十分に見極める必要があります。

空き家・賃貸・売却のメリット、デメリット

前述した転勤期間に加え、これからご説明する、空き家・賃貸・売却の
それぞれメリットとデメリットを総合的に判断し、どのような選択を取るか決定しましょう。

空き家のメリット

空き家のままにしておく最も大きいメリットは、その物件に将来的にいつでも戻って住める点でしょう。

転勤が一時的なものである場合、空き家とすれば、転勤から戻った際にすぐに以前の生活に復帰できます。
賃貸や売却などの手続きを取る必要がないため、スムーズに住み慣れた場所に戻れるのが大きな利点です。

また、空き家の場合は、家財道具をそのまま残しておくことができます。
引っ越しの手間が最小限で済むだけでなく、愛着のある大切な家具や思い出の品々も、別途コストをかけずに守れるメリットがあります。

さらに、空き家への出入りは自由なので、急遽必要になった場合や気が向いた際に、一時的に戻って宿泊することも可能です。賃貸の場合は別の人が居住しているため不可能ですが、空き家ならそういった融通性があります。

加えて、短期的であれば空き家の管理も最低限の対応で済むため、面倒な手続きや高額な費用がかからないというメリットがあります。

このように、転勤が一時的で期間が比較的短ければ、空き家のままにしておく十分なメリットが享受できます。

空き家のデメリット

一方で、空き家にしておくことはデメリットも存在します。

最大の懸念材料は、家屋自体の劣化や傷みが進行することです。
人の手が加えられない状態が続けば、内外装の損傷や設備の故障など、建物の劣化が加速されます。
最悪の場合、建物が危険な状態に陥る可能性すらあります。

また、長期の空き家は犯罪や火災の危険性も高まります。
不審者が侵入したり、放火されたりするリスクが存在するため、防犯対策が必要不可欠になり、コストもかさみます。

さらに、空き家であっても固定資産税をはじめとした維持費用は発生し続けます。
住宅ローンが残っている場合、返済負担が重くのしかかってくることでしょう。

このように空き家状態が長期化するほど、伴うデメリットは深刻さを増していきます。
そのため、転勤の期間が長期に及ぶ可能性がある場合は、空き家の弊害を避けるため、賃貸や売却を検討する方が賢明であると言えます。

賃貸のメリット

次に、家を貸すメリットを確認していきます。
こちらはなんといっても、所有する不動産を資産として有効活用し、安定した家賃収入を得られる点でしょう。

入居者から毎月一定額の賃料が入ってくるため、予算の組み立てがしやすくなります。
この家賃収入の使途は自由で、生活費の一部に当てることもできますし、住宅ローンが残っていれば返済に充てることも可能です。

また、税制面による恩恵を受けることでがきます。
賃貸による所得に対しては、様々な経費が控除として認められており、確定申告が必要ではありますが、節税対策の一環として活用できます。

メリットの大きさを考えれば、資産の有効活用や収入確保の手段として、賃貸は検討に値する選択肢だと言えるでしょう。

賃貸のデメリット

賃貸には無視できないデメリットも存在します。

最大のデメリットは空室リスクです。
入居者が見つからず空室期間が発生すれば、その間は家賃収入がゼロになってしまいます。
しかし、空室中でも最低限の維持管理費用は発生するため、コストだけが先行することになります。
このリスクを最小限に抑えるには、広告宣伝費などを投じた集客活動が必要不可欠です。

また、入居者とのトラブルもデメリットとして挙げられます。
中には家賃の支払いを怠る入居者がいたり、無断で設備を破損したり、近隣トラブルを引き起こす者もいるかもしれません。
そうしたトラブルが生じた場合、時として法的手段に訴えざるを得ず、大きな精神的・金銭的負担が発生するリスクがあります。

これらのリスクを回避するには、入居者募集から管理までを不動産会社に一括して委託するのが一般的です。
しかし、その分、不動産管理手数料などの経費が別途発生します。

このように、賃貸にはさまざまなデメリットが存在します。
メリットを最大限に活かすためには、専門家との連携を密にし、リスク対策を十分に講じる必要があります。

売却のメリット

最後に、自宅を売却するメリットとデメリットを確認していきます。

まずメリットですが、ひと括りの資金を手にできる点にあります。
この売却代金は、転勤先での新生活を立ち上げるための大きな力になります。

具体的には、転勤先で新居を購入する際の資金源として活用できます。
売却代金があれば、新居購入に必要な借入額を抑えられる可能性があり、ローン返済の負担が軽減されます。
賃貸に出す場合と比べ、初期コストを大幅に圧縮できるメリットがあります。

また、売却により自宅を手放すことで、これまでの住宅維持にかかっていたさまざまな経費から解放されます。
固定資産税、修繕費、管理費など、空き家や賃貸を継続した場合に発生する出費がなくなります。
長期的に見れば、かなりのコスト削減につながるでしょう。

このように売却は、一時金の確保と将来コストの大幅削減を同時に実現できる選択肢です。
転勤によるライフスタイルの変化に対し、円滑に適応していくための強力な資金的裏付けとなり得ます。

加えて、資金の有無は新天地での生活設計を大きく左右する要因にもなります。
売却により潤沢な資金を確保できれば、より自由度の高い新生活の展望が開けるかもしれません。

売却のデメリット

さて、売却のデメリットですが、一度でも物件を売却してしまえば、その物件に将来的に戻って住めなくなる点です。

たとえ転勤が一時的なものであっても、売却によってその選択肢を完全に失ってしまいます。
思い入れのある大切な場所を手放すことになり、精神的なダメージも無視できません。

また、売却には手数料が発生するというデメリットもあります。
不動産会社への仲介手数料や広告宣伝費、税金など、売却関連の経費が発生します。
場合によっては数百万円単位のコストがかかる可能性があります。

さらに、売却活動自体に手間がかかるデメリットも指摘できます。
査定を受けたり、購入希望者の内見対応をしたりと、売主側での心理的・時間的な負担が発生します。
遠隔地の場合はさらにその傾向が強くなります。

加えて、税制面でのデメリットもあり得ます。
売却で利益が発生した際には、譲渡所得として課税される可能性があるため、時には節税対策が必要になるかもしれません。

このように、売却は大きなメリットがあるものの、物件を手放すことによるデメリットも無視できません。

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賃貸に出すときの手順

ここからは、自宅を賃貸に出す際の一般的な手順を確認していきましょう。
賃貸経営では、不動産管理会社と綿密に連携を取りながら、計画的に進めていくことが肝心です。
スムーズな手続きと、良質な入居者の確保に向けて、専門家のサポートを上手に活用することがポイントになります。

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①不動産会社に賃料査定を依頼する

自宅を賃貸に出す際の第一歩は、不動産会社に賃料査定を依頼することです。

賃料査定とは、物件の客観的な価値を不動産業者が算出し、適正な賃料水準を提示するサービスです。
物件の立地条件、築年数、間取り、広さ、設備状況など、さまざまな要素を総合的に判断し算出された査定賃料を基準に、募集賃料を決定することになります。

査定された賃料に納得できない(不動産会社の説明が疎かであった)場合などは、
別の不動産会社に査定を依頼し、算出された賃料を比較検討することも有効です。
特に、マンションの貸し出しに比べると、一戸建ての貸し出しは各社の査定額に幅が出やすいです。

査定は机上のみで行われる場合や、現地を訪問し、内外部の状況を確認した上で行われる場合もあります。
現地査定を受けた方が、不動産会社が物件の強みや弱みを正確に把握し、適正な査定額を算出してくれるでしょう。

査定額はあくまで目安に過ぎず、最終的な募集賃料は物件所有者が決めることになりますが、事前の査定は欠かせない重要な過程と言えます。

②媒介契約を結ぶ

賃料査定が済めば、次は不動産会社と正式な媒介契約を結ぶ段階に入ります。

媒介契約とは、賃貸借契約の仲介を不動産会社に依頼する契約です。
この契約で、不動産会社がどこまで賃貸業務を代行してくれるのか確認しましょう。
入居者募集から審査、契約手続きまでを一括して任せるのか、途中からオーナーが関与するのかなど、役割分担をはっきりさせる必要があります。

さらに重要なのが、契約内容(専任媒介・一般媒介)の違いです。
専任媒介なら、他社は媒介先の不動産会社以外を通して賃貸借契約を行うことができません。
※オーナー自ら入居者を見つけて賃貸借契約を行うことは可能です。

一方の一般媒介なら、他社との併行契約も可能です。
(ただし、恵比寿不動産では専任媒介契約をおすすめしています。この点は後述いたします。)

併せて、契約期間や解約条件なども忘れずに確認しておきましょう。
不動産会社が思うように入居者を見つけられない場合、現在の契約を解除したうえで、新たな不動産会社との契約が必要になるかもしれません。

契約内容は細かく精査し、疑問点は質問するなどして、理解を深めることが大切です。

専属専任媒介契約専任媒介契約一般媒介契約
依頼社数1社のみ1社のみ複数社可能
不動産流通サイトへの
情報登録義務
媒介契約締結後
5日以内
媒介契約締結後
7日以内
義務無し
活動状況報告1週間に1回以上文章
またはメールで報告
2週間に1回以上文章
またはメールで報告
義務無し
自己発見取引不動産会社が仲介に
入ります
契約可能契約可能
契約有効期間3ヶ月以内3ヶ月以内制限無し

③募集賃料や募集条件を決める

不動産会社と媒介契約を交わした後は、募集賃料や募集条件を具体的に決めていく段階です。

募集賃料については、事前の査定賃料を基準にしますが、
競合物件の状況や、想定している入居者層のニーズを踏まえて、最終的な金額を決める必要があります。
高すぎても入居者がつきにくく、低すぎても採算がとれなくなるリスクがあるためです。

一方の募集条件では、広く一般に募集するのか、特定の条件を設けるのかを決めます。
例えば、「学生可」「ペット可」「高齢者可」など、入居者の属性を限定することができます。
また、「家族向け」「単身者向け」など、世帯条件の設定も可能です。
その他、駐車場や駐輪場の有無、室内の禁煙・分煙設定なども募集条件の一部になります。

条件を絞り込めば、マッチした入居者を効率良く見つけられる可能性が高まります。
ただし、条件が厳しすぎると選択肢が狭まりすぎてしまうリスクもあり、需要を見極めながら決める必要があります。

募集賃料と募集条件を適切に組み合わせることで、スムーズな入居者募集が可能になります。
物件の立地特性や設備状況、想定するターゲット層などを総合的に勘案し、最適な設定を目指すべきでしょう。

④入居者の募集活動

募集条件が決まれば、本格的な入居者募集活動に入ります。
この作業は主に不動産会社が中心となって行います。

不動産会社は自社が運営する不動産ポータルサイトやアプリなどに、募集物件の情報を掲載します。
立地、家賃、間取り、写真などの詳細を記載し、インターネット上で広く入居希望者に向けてアピールします。

また、店頭における募集広告や、折り込み広告、新聞・雑誌広告なども活用されます。
対象エリアを絞り込んで効果的に宣伝を展開することで、入居者層に適したアプローチが可能になります。

その他にも、不動産会社によってはInstagramなどのSNSを活用した告知なども行われる場合があります。
消費者行動が多様化する中で、ターゲットに合わせた広報活動が求められています。

募集活動は不動産会社の強みが発揮される部分でもあります。
会社によって得意な宣伝手段は異なりますし、対応できるエリアや入居者層によっても変わってきます。
その点を見極め、募集力に長けた適切な会社を選ぶことが重要になってきます。

⑤審査

入居希望者から申し込みの連絡があった場合、不動産会社は審査を行い、入居の適否を判断します。

審査では、入居希望者の収入状況や職歴、連帯保証人の有無などを確認します。
これらは、家賃の支払い能力があるかどうかを見極めるのが主な目的です。

具体的には、下記のような項目が審査対象になります。

・年収や残高証明による収入状況の確認
・課税証明書による課税状況の確認
・雇用契約書や源泉徴収票による職歴の確認
・連帯保証人の確認
・現在の住居の状況や転居理由の確認
・同居人の有無と人数の確認
・反社会勢力に属していないかの確認

場合によっては、入居希望者に面接を行い、人となりや生活態度などの本人確認をすることもあります。
経済力はもちろん、明朗で真面目な人柄、きちんとした生活習慣を持っているかなども重要な観点となります。

審査は、入居後のトラブル防止において大切なプロセスです。
不動産会社では専門のスタッフが丁寧に確認を行い、オーナーの意向を十分に加味したうえで、受入れ可否を最終判断します。

⑥賃貸借契約

審査を通過した入居希望者と、正式な賃貸借契約を結ぶ段階に入ります。
この契約は、オーナーと入居者の権利義務関係を明確にする重要なものです。

賃貸借契約書には、物件の表示のほか、賃貸期間、賃料額、敷金・礼金、契約更新の条件、原状回復の取り決め、禁止事項などが詳細に記載されます。
これらの内容は、募集の際にはオーナーと不動産会社で決めていることが一般的です。
ただし、入居者側から合理的な交渉があった場合には、一部内容を変更することもあります。

契約書は不動産会社が作成を代行してくれますが、オーナー側でも内容を十分に確認し、説明を受けることが大切です。
この賃貸借契約が、今後のトラブル未然防止に大きな役割を果たすからです。

また、入居者保護の観点から、契約締結時には宅地建物取引士による重要事項説明が義務付けられています。
この説明では、物件の状況や賃貸借契約の内容など、入居者が知っておくべき重要な事項についての確認が改めて行われます。

賃貸借契約は法的拘束力のある文書ですので、内容を十分に理解したうえで締結する必要があります。
不明な点があれば不動産会社に質問し、しっかりと確認を行いましょう。

家を貸す時のコツ

自宅のマンションを賃貸に出す際、スムーズかつトラブルのないように進めるためにはコツがあります。

事前の準備から不動産会社の選定、運営フェーズに至るまで、様々な点に気を配ることが重要です。
適切な対策を講じることで、賃貸経営をスムーズに行うことができます。

ここからは、そのようなコツをいくつかご紹介します。

収支シミュレーションを行う

賃貸経営を行う上で欠かせないのが、収支シミュレーションです。
家賃収入から様々な経費を差し引いた純収益を試算し、採算がとれるかどうかを事前に確認する必要があります。

まず見積もるべきは、年間の家賃収入総額です。
募集賃料から想定の年入居率を算出し、試算してみましょう。

続いて、経費の項目ごとに金額を積み上げていきます。

主な経費項目の例

・管理手数料
・修繕費(設備の補修費用など)
・火災保険料
・固定資産税
・仲介手数料
・広告宣伝費

加えて、長期修繕計画に基づく将来の大規模修繕費用も視野に入れる必要があります。
築年数が経過すれば、外壁の塗り替えや設備機器の交換など、多額の出費が発生します。
このように項目ごとに金額を見積もり、経費を算出します。

これらによって導き出された純収益が、リスクを考慮してもプラスになる水準にあれば採算性があると判断できます。
マイナスであれば物件を貸さない方が得策かもしれません。

このように収支シミュレーションは、賃貸経営の意思決定材料となる重要な検討項目なのです。

客付け力のある不動産会社を選ぶ

賃貸経営をスムーズに行うには、客付け力の高い不動産会社を選ぶことが重要なポイントになります。

客付け力とは、効果的な入居者募集と、実際に多くの入居希望者を獲得できる営業力のことを指します。
単に広告を打つだけでなく、適切な層にアプローチし、内見へと誘導できる実践的な能力が求められます。

この客付け力は、不動産会社の取引実績などから判断することができます。
年間の賃貸契約件数が多ければ多いほど、営業力とノウハウが高いと考えられます。

また、同じ地域で長年活動している会社ならば、地元の実情に精通しており、効果的な募集活動が期待できます。
地域密着型で豊富な実績を持つ会社に依頼すると安心です。

一方で、知名度や全国展開する大手という理由だけで不動産会社を選んでしまうと、地域密着度が低く、入居者のニーズを適切に把握できない可能性があります。
その結果、募集活動が的確にできず、空室期間が長くなるリスクがあります。

客付け力を判断する上で、口コミ情報も参考になります。
過去の実績や対応の良し悪しは、大切な選定材料となるでしょう。

営業実績や専門性、地域密着度など、様々な観点から客付け力を総合的に判断し、最適な不動産会社を選びましょう。

専任媒介契約を結ぶ

賃貸経営を効率的に行う上で、専任媒介契約を結ぶこともコツの一つです。

専任媒介契約とは、特定の不動産会社に物件の専任を委ねる契約形態です。
つまり、その不動産会社以外での募集活動は認められません。

この契約形態のメリットは、不動産会社からの手厚いサポートが受けられる点にあります。
専任となれば、その会社は全力で物件の賃貸借に注力してくれます。
きめ細かい営業活動はもちろん、効果的な広告出稿、スピーディーな審査対応、適切な条件設定のアドバイスなど、様々な側面で真摯なサービスが期待できます。

一方一般媒介契約では、同時に複数の不動産会社に依頼することになるため、その分サポートが手薄になる恐れがあります。信頼のおける不動産会社と専任媒介契約を結び、スムーズに入居者を確保しましょう。

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売却に出すときの手順

ここからは、売却に出すときの手順について確認してきましょう。

①不動産会社に査定依頼をする

自宅を売却する際の第一歩は、複数の不動産会社に査定を依頼し、物件の適正な売却価格を確認することです。

賃料査定と同様、不動産会社の専門スタッフが物件の立地条件、間取り、築年数、設備状況などを総合的に判断し、適正な売却価格を算出します。
マンションなど、過去に類似の売却事例がある場合、査定金額に大きな開きはでませんが、
一戸ごとに固有である戸建ての場合、査定金額にばらつきが出る可能性があります。

複数の不動産会社に査定を依頼する理由は、査定額にはある程度の開きが生じるためです。
その差を比較検討することで、より適正な価格を導き出せます。
査定額に大きな開きがある場合は、高額な査定を出した会社に根拠を確認し、価格の妥当性を検証することも可能です。

このように、複数の査定額を比較し、オーナーとしてもある程度の価格感覚を持った上で、売却活動に入るのが賢明です。
査定時に専門家からアドバイスを受けることで、売却における適切な準備や対策なども学ぶことができます。

②媒介契約を結ぶ

複数の不動産会社から適正な査定額を確認した後は、売却を任せる会社と正式な媒介契約を結ぶ段階に入ります。

媒介契約とは、売買契約の仲介を不動産会社に依頼する契約のことです。
この契約で、仲介手数料率や役割分担、契約期間などが明確に取り決められます。

まずは、査定額が適正かつ満足のいく不動産会社を選定します。
さらに査定金額に加え、会社の実績や対応力、専門性なども総合的に勘案する必要があります。

売主としての希望を十分に汲んでくれつつも、
必要であれば反対意見も論理的に述べてくれる会社を選び、専任媒介契約を結びましょう。

契約内容はオーナー自身でしっかりと確認し、不明な点は必ず質問をして理解を深めることが大切です。
この媒介契約が、売却活動の土台となる重要な起点だからです。

③売却活動

媒介契約締結後、不動産会社は本格的な売却活動に取り組みます。
まずは物件の魅力を的確に訴求できるよう、写真やパノラマビューなどのビジュアル素材を十分に用意します。
これらの素材は、インターネット上の不動産ポータルサイトやSNSなどで活用されます。

次に、対象となる購入者層を絞り込みます。
一般の住宅購入希望者だけでなく、例えば収益物件として興味を持つ投資家なども重要なターゲットとなります。
不動産会社はターゲットごとに最適な宣伝手段を選択し、効果的にアプローチを行います。

具体的な宣伝手段としては、新聞や雑誌、ダイレクトメールなどの従来からの手法に加え、
動画広告やSNSマーケティングなど、デジタル媒体を活用した新しい手法も取り入れられています。
購入者層の行動様式に合わせて、様々な宣伝ルートを組み合わせることが重要視されています。

さらに不動産会社によっては、対面での物件説明会の開催や、見学会などのイベントを企画する場合もあります。
実際に現地で物件を体感できる機会を設けることで、購入意欲を高められると考えられています。

このように、効果的な売却活動を行うには、ビジュアル素材の充実から、ターゲット設定、宣伝手段の選択、現地イベントの企画まで、多岐にわたる準備が求められます。

④売買契約結ぶ

売却活動を経て購入希望者が見つかれば、次は正式な売買契約締結に向けた準備に入ります。

まずは購入者候補との価格や条件の最終調整を行います。
不動産会社を介して双方の希望を伺い、妥協点を見出す作業が欠かせません。
価格面での熱心な交渉も不可欠です。

条件がまとまれば、購入者に対して重要事項を説明する義務が発生します。
不動産会社から物件の現状や不具合の有無、引渡し時期など、契約において重要な点をすべて説明してもらう必要があります。

この重要事項説明を経た上で、双方が内容に納得が得られれば、正式に売買契約書への署名捺印が行われます。
この契約書は所有権移転の根幹となる極めて重要な書類です。

契約書には物件情報や売買価格、契約不適合責任の内容など、取引条件が詳細に記載されています。
売主としても物件状況を適切に説明する責任がありますので、漏れのないよう留意が必要です。

契約成立に伴い、購入者から手付金の支払いを受けるのがスタンダードです。
この金額は正式な売買代金の一部となります。

以降は売買代金の残金準備と、決済手続き、所有権移転の登記といったプロセスを適切に進めていくことになります。
売買契約は物件売却の正式な起点となる極めて重要な段階なのです。

⑤決済・引き渡し

売買契約が締結されたら、最終段階となる決済と物件の引き渡しを残すのみとなります。

まずは、契約時に受け取った手付金を本契約金に充当します。
契約不履行の際のペナルティーとして機能する大切なお金です。

その後、購入者側で残金の準備を進め、不動産会社を通じて売主に残金を支払う決済を行います。
売買価格から手付金を除いた金額が残金になります。

決済が完了したら、次は所有権移転の登記手続きに入ります。
これにより、物件の所有権が法的に購入者に移転します。

登記申請時に売買契約書の写しや印鑑証明書、登録免許税の納付書など、必要な書類をすべて揃える必要があります。
登記申請は不動産会社が手配した司法書士が手続きを代行してくれる場合がほとんどです。

登記が済めば、物件の鍵を購入者へ引き渡し、売買が完了します。

長年住み続けた我が家を手放すのは、オーナーにとって感慨深いものですが、
決済と引渡しの最終段階では、売主としての冷静な対応も欠かせません。

売却する時のコツ

ここからは、物件を売却する時のとっておきのコツをいくつかご紹介します。

相場やエリアの需要を把握する

売却活動に入る前の大切な準備として、対象エリアの物件相場、需要動向、さらには収益性を把握しておくことが重要です。

まず、相場価格については、同じエリアの同条件物件の売買事例を参考にすることで概ね見当がつきます。
不動産会社に積極的に情報を求め、売買価格の目安を立てましょう。
一般的に立地条件、住環境、駅からの距離、間取り、広さ、築年数などで相場は変動し、新築と中古でも開きがあります。
こういった様々な条件を総合的に勘案する必要があります。

次に、需要動向についても事前把握が欠かせません。
人気エリアなのか販売が滞留気味なのか、地域ごとに違いがあります。
自治体の統計データも参考にすると、より正確な需給バランスが分かります。

さらに、不動産投資家層向けには、その物件がどれくらいの収益性があるかが重要なポイントになります。
賃貸収入から予想利回りを算出し、投資価値を判断するためです。
こうした収益性の指標も合わせて把握しておく必要があり、収益性が魅力的であれば投資家需要も見込めるでしょう。

このように、相場、需要、収益性のバランスを事前に見極め、時期や販売価格を適切に設定することが何より大切です。
需要が高ければ売却は有利になりますが、供給過多なら価格競争に巻き込まれるリスクがあります。

不十分な準備は売り時のタイミングを失したり、期待通りの売却ができなくなったりする恐れがあります。
いかに適切な情報を把握し、判断材料にできるかがコツとなってきます。

信頼できる不動産会社を選ぶ

自宅の売却は、通常数百万円から数千万円単位の高額な取引となります。
そのため、売却を依頼する不動産会社の選定は慎重に行う必要があります。

信頼できる不動産会社を選ぶポイントとしては、まず長年の実績と売買実務に精通していることが挙げられます。
地域密着型で取引件数が多く、高い専門性を持つ会社であれば安心できます。

会社の体制や人員態勢、売買サポートの質にも目を向ける必要があります。
アフターサポートに手厚い会社であればなお良しです。
書類手続きの代行や相談対応の充実度合いを事前に確認しましょう。

また、実際の営業スタッフとのやり取りを通して、誠実で丁寧な対応をしてくれるかどうかを見極める必要もあります。
売主のニーズをきちんと汲み取れるかが大切なポイントになります。

口コミ情報も重要な判断材料の一つで、過去の取引実績や対応力の良し悪しは、
信頼の高低を判断する上で参考になるはずです。

さらに、売主の最大利益を考えてくれる姿勢があるかも見逃せません。
もちろん高値で売れるに越したことはないですが、現実的に売却できるであろう適正価格で提案してくれる会社がベストです。
このように、実績、信頼性、対応力など多角的な観点から、最適な不動産会社を選定することが不可欠です。
大切な財産を預ける以上、万全の体制が整っている会社を選ぶべきです。

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家の印象をよくする(ハウスクリーニング)

最後のコツとしては、物件の印象を良くすることです。
掃除を徹底し、清潔感のある空間を演出することで、購入希望者の理解と興味を深めることができます。

できれば人が住んでいない状態で内見ができるようにし、家財は全て撤去、通路や各室をすっきりとした空間にします。
生活感が出てしまうと、購入者が物件のイメージをうまく描けなくなる可能性があるためです。

そして、壁や天井、窓ガラス、流し台など隅々までこまめに掃除を行います。
長年の住みこみによる細かな汚れを徹底的に除去するのがポイントです。
定期的な掃除だけでは落ちない頑固な汚れについては、プロのハウスクリーニング業者に依頼するのも効果的でしょう。
カーペットや家具の専門クリーニングも同様です。

広い空間を一新し、真っ白なキャンバスのように清潔な印象を与えることが目的です。
新品同様の状態に近づけられれば、購入者のイメージアップにつながります。

また、内見時には照明を全て付け、明るい状態でお部屋を確認してもらうと、雰囲気が明るい良い印象を与えられます。
お花を一輪花瓶に飾るだけでも、印象が段違いになります。

塗装や建具の張り替えなどの軽微なリフォームも効果的です。
簡単な模様替えで、家の印象をいっそうフレッシュにすることができます。

ただし、費用対効果を考えれば、必要以上の大掛かりなリフォームは避けた方が無難でしょう。
中古物件であれば、ある程度の使用感は許容されるはずです。

このように、購入希望者が実際に内見した際、心地よい空間を体感できるかどうかが大きなポイントで、清潔な印象と居住性の高さを両立させることが求められます。
そのためにも、計画的にハウスクリーニングと簡単な模様替えには取り組むべきなのです。

よくある質問

最後に、皆様からよくある質問に回答していきます。

質問①ローンが残っている家も貸すことはできるのか?

住宅ローンの残債があっても、その物件を賃貸に出すことは可能です。
賃料収入を活用してローン返済を続けられるからです。

具体的には、毎月の家賃収入から必要経費を差し引いた残額を、ローン返済金に充てていきます。
これにより借入金の返済が可能になります。

ただし、金融機関によっては「家を貸し出す」にあたり、事前承認や、アパートローンへの借り換えが必要になる場合があります。
承認が必要な理由は、金融機関が抵当権者となっている場合が多く、物件の所有権や管理状況をきちんと把握しておく必要があり、賃借人が入ることで、物件の性質や権利関係に変化が生じるからです。

このため、賃貸を行う場合は、あらかじめ金融機関に相談し、承認を得ておくことが重要です。
万が一、無断で賃貸に出した場合は、ローン契約違反となり一括返済を求められるリスクもあります。

一方で、賃貸による収入アップはローン返済が円滑に行えるようになるため、金融機関にとってもメリットになります。
そのため、賃貸に対して前向きな対応をしてくれる場合もあります。

賃貸に伴う入居者トラブルへの対応体制を確認されることもありますが、適切な管理体制を整えれば問題ありません。
最終的には、金融機関との綿密な連携が不可欠といえるでしょう。

質問②海外転勤の場合でも貸すことは可能か?

海外に転勤となった場合でも、国内にある自宅を賃貸に出すことは可能です。
ただし、遠隔地からの管理には一定の手間がかかるため、注意が必要です。

賃貸経営をするには、入居者の募集から契約、入退去の立ち会い、トラブル対応など、オーナーが直接関与すべき場面が多くあります。
海外在住であれば、このような対応が難しくなります。

そこで、国内にオーナーの代理人となる方を立てる必要があります。
代理人には、不動産会社やオーナーの親族・知人などが想定されますが、知見のある不動産会社に頼むことが一般的できてあり、また推奨されます。

しかし、不動産会社に一任するだけでは不安が残るかもしれません。
そのような場合には、オーナー自身がいつでもリモートで物件の状況を確認することができるといった、体制を整備することが賢明でしょう。
不動産会社との定期的なオンライン会議の実施なども検討する必要があります。

さらに、国内への一時帰国を計画し、年に数回は立ち会いや点検を行うなど、物件の状況把握に努めるべきです。
遠隔地での管理には、この様な手間とコストは避けられません。

まとめ

転勤が決まったら、早めに物件の処分方法を検討する必要があります。
短期なら空き家、長期で期間が決まっていれば賃貸、期間が不明なら売却が賢明な選択肢となります。

これまで確認してきた通り、それぞれ一長一短があるため、自身の状況に合わせて検討し、
また、信頼できる不動産会社とも相談して決定することが大切です。

転勤は生活の大きな変化を伴います。
計画的に対応することで、新天地での生活をスムーズにスタートさせることができるでしょう。

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檜垣知宏:宅地建物取引士のアバター

檜垣知宏:宅地建物取引士

株式会社ライフアドバンス代表取締役の檜垣知宏です。 2014年8月に設立し、恵比寿不動産という屋号で賃貸仲介・売買仲介・賃貸管理を行う不動産業者です。 不動産業界歴15年の経験を生かし、 運営しているサービスサイトである「不動産の相談窓口」の運営者も務めております。

保有資格:宅地建物取引士

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